心電図
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3.アルドステロン拮抗薬と心室リモデリング
蔦本 尚慶林 優田中 俊成西山 敬三山本 孝山路 正之藤井 応理伊藤 誠堀江 稔
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2008 年 28 巻 1 号 p. 22-31

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抄録

RALES (Randomized Aldactone Evaluation Study) 試1験やEPHESUS (Eplerenone Post-AMI Heart Failure Efficacy and Survival Study) 試験の結果, 慢性心不全や急性心筋梗塞患者においてACE阻害薬などの標準治療薬に抗アルドステロン薬を併用することが心不全死や突然死の改善につながることが証明された.左室駆出率 (LVEF) 低下と左室リモデリングは心室性不整脈の主要な原因である, われわれは, 抗アルドステロン薬の左室リモデリング抑制効果を慢性心不全患者, 急性心筋梗塞患者で検討した.すでにスピロノラクトン (Spi) 以外の標準治療を受けている心不全患者を対象に, 無作為にSpi投与群, 非投与群に割り付け4カ月観察した, 4ヵ月後に, Spi投与群においてのみLVEFの改善, 左室拡張末期容積の減少, BNP濃度の低下, 皿型プロコラーゲン濃度の低下を認めた.したがって, RALES試験の予後改善効果に左室リモデリング改善作用が示唆された.最近, 急性心筋梗塞患者で入院時のアルドステロン濃度が高い患者は, 致死的不整脈による死亡率が高いと報告された.われわれは, 134名の急性心筋梗塞患者を対象にACE阻害薬などの標準治療群とSpi併用群で急性期と, 1ヵ月後の左室機能を比較検討した.その結果, Spi併用群で1カ月後のLVEFは保持され, 左室拡張末期容積は小さくなり左室リモデリングが抑制された.またSpi併用群では心筋線維化の生化学的指標とされる皿型プロコラーゲン濃度も有意に低下していた.したがって, 急性心筋梗塞後の左室リモデリングは従来のACE阻害薬などの標準治療にSpiを併用することで改善する可能性があり, EPHESUS試験においても予後改善効果に左室リモデリング抑制作用の関与が示唆された.抗アルドステロン薬は, 左室リモデリング抑制作用などにより致死性不整脈を減少させる可能性がある.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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