抄録
房室結節リエントリー性頻拍 (AVNRT) 6例, 潜在性WPW症候群6例の計12例の発作性上室性頻拍例を対象とし, 心臓カテーテル室 (カテ室) と一般病棟のBedside (BS) でプログラム刺激を行い, カテ室に比べBSにおいて, 7例でecho zone (EZ) の拡大, 3例で縮少を認めた。EZの変化した10例では, EZの拡大している状況で, 洞周期・房室結節有効不応期の短縮, Wenckebach型房室伝導を示す最少心房刺激頻度の増加を認め, これらの所見から交感神経系の緊張状態ないしは副交感神経系の緊張低下の状況で頻拍が誘発されやすい事が推測された。AVNRTの2例では, BSにおいてのみ頻拍の誘発が可能であった。
以上, 多くの例でカテ室とBSでの頻拍誘発に差が認められ, その一因として自律神経系の変化が考えられた。また, カテ室で頻拍誘発の困難な例に対し, BSでのプログラム刺激法は, 頻拍の誘発, ひいては治療薬剤の決定に有用な方法となり得ると思われた。