1986 年 6 巻 1 号 p. 35-40
モルモット心室筋を低K+・高Ca2+液にて灌流して細胞内Ca2+負荷の状態を作製すると, 脱分極から再分極した際に一過性内向き電流 (TI) が認められ, 同時に大部分の標本で脱分極パルス中にもくり返す内向き電流の発現が観察された.二つの内向き電流の平均周波数は3~5Hzで極めて近似した.脱分極パルスの持続時間を変えてTIの逆転電位をみると, 脱分極中の内向き電流のピーク時には, TIの逆転はみられず0mV付近を最小とする内向き電流の電位依存性がみられた.TIを増強するノルアドレナリンや外液高Ca2+は脱分極中の内向き電流も増大せしめ, 前者を減少させるCo2+や低Ca2+は後者も抑制した.低濃度 (1mM) カフェインは両者を一過性に増強した後抑制, 2mMプロカインは両者を完全に抑制した.以上より, Ca2+負荷時には脱分極中にも小胞体からのCa2+放出に依存する内向き電流が活性化されることが示唆された.