日本環境感染学会誌
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原著論文
MRSA感染症治療の臨床効果に影響を及ぼす因子と栄養摂取方法に関する検討
島崎 信夫依田 啓司飯田 秀夫松本 宜明
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2008 年 23 巻 1 号 p. 27-34

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抄録
  メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症の治療に抗菌薬による薬物療法を行っているにも関わらず,重症な感染症患者の多くは栄養状態などの低下があり薬物療法の効果が十分得られない症例がある.そこで本研究では効果に影響を及ぼす因子の解明のため,2003年11月から2006年3月までの期間,抗MRSA薬を投与した64症例を対象に,薬剤投与開始から終了までのCRPの変化を指標に有効群と無効群の2群に分け,生化学データ,薬剤投与状況,血中濃度,抗菌薬に対する感受性および栄養摂取方法を調査した.さらに多変量ロジスティック回帰分析を行った.その結果,TDMの実施は有効群と無効群ではそれぞれ100%と71.9%であり(p=0.004),また多変量ロジスティック回帰分析結果では,年齢(Odds ratio (OR)=0.94),薬剤投与期間中の血清総タンパク(TP)の増加量(OR=2.46)が有意な因子として抽出された.抗菌薬のPharmacokineticパラメータやMRSAの薬剤感受性には有意な差はなかった.さらに有効群では治療期間中のTP増加量が大きかった症例の半数以上は,栄養摂取が経口または経鼻栄養であり消化管を介した経路であった.以上より,感染症治療では適切な抗菌薬の使用だけではなく,栄養サポートチームと密接な連携を図り,栄養摂取方法や栄養状態の改善も重要であると考える.
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© 2008 一般社団法人 日本環境感染学会
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