日本環境感染学会誌
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最新号
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総説
  • 辻 泰弘
    2021 年 36 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/09/24
    ジャーナル フリー

    数値上,小児と成人を比較した場合に最も大きく異なるものは体重である.ヒトは全ての生理機能が完全に備わった状態で生まれてくるわけではなく,生後の発達に伴い必要な生理機能を獲得する.成人を100%とすると,腎機能の指標である糸球体濾過速度の成熟度は出生時点において成人の25-40%程度であるが,出生後1年で90%程度まで成熟し,出生後2年で成人と同程度となる.本稿では,生物のエネルギー代謝,小児から大人への成熟度および小児における薬物動態の基本的な考え方を述べた後,抗菌薬の投与設計について概説する.

proceedings
短報
報告
  • 白石 廣照, 木下 庸佑, 三浦 邦久
    2021 年 36 巻 2 号 p. 92-97
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/09/24
    ジャーナル フリー

    2020年4月18日より4階建ての特別養護老人ホームにおいて,2階より10名の発熱者が出現し,新型コロナウイルスに対するPCR検査をホームで行い9名が陽性と判定され,当院に収容した.4月27日全入居者と全職員にホームでPCR検査を行った.その結果,入居者21名,ショートステイ1名と職員6名が陽性となった.陽性者22名をホームの2階に集めて,陰性者は3階と4階に移動した.ホームの2階と3階にゾーニングを行い,電子カルテ上に仮想病棟を構築し,検査や投薬点滴のオーダーができるようにし,入居者の状態も病院で把握できるようにした.ホームで血液検査や尿検査を行い,精査が必要と判断された場合,病院に搬送した.

    5月13日,69名に2回目のPCR検査を行い,2階は15名が陽性となり,3階から新たに3名が陽性となったため,この3名は2階に移動した.5月27日から6月19日まで,PCR検査を4回繰り返し,すべての入居者が2回連続陰性となったのを確認して,クラスターは収束したと判断した.この間,肺炎や多臓器不全などの合併症により,6名が死亡し,入居者の死亡率は14.3%だった.

  • 笹原 鉄平, 丸山 沙緒里, 野澤 彰, 吉村 章, 森澤 雄司
    2021 年 36 巻 2 号 p. 98-104
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/09/24
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は高齢者で重症化のリスクが高いことが知られており,高齢者施設における対策は緊急の課題である.高齢者施設がどの程度の対策を実施しているか,何が不足しているか,など感染対策の現状を明らかにし,必要な支援等を検討するために,栃木県内の285の入居型高齢者施設を対象にアンケート調査を実施した.回収率は44.9%であった.早急に解決すべき問題として,多くの施設で日常的に連絡できる外部相談先がない,個人防護具・消毒薬が不足している,42.2%の施設でCOVID-19対策マニュアルがない,30.5%の施設で発熱した入居者を隔離できていない,などが挙げられた.また,多くの施設が自施設内でのCOVID-19発生時の対応に自信がなく不安に思っていること,自施設内でCOVID-19が発生してしまった際に,外部からの人的支援に対する需要があることが明らかとなった.

  • 宇都宮 遼, 中川 いづみ, 濱田 信
    2021 年 36 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/09/24
    ジャーナル フリー

    当院に勤務している職員(618名)を対象に,流行性ウイルス感染症の抗体価を測定し,抗体保有状況について検討した.その結果,約7割の職員にワクチン接種歴の調査や追加のワクチン接種が必要であることが判明した.

    麻疹の基準を満たす抗体陽性者は全体の46.1%と低値であり,麻疹が院内に持ち込まれた場合アウトブレイクの危険性が高いことが分かった.一方で,水痘は基準を満たす抗体陽性者が90%を超えており,抗体価が基準に満たない職員を把握しておくことで帯状疱疹や播種性帯状疱疹の患者からの曝露リスクを回避することが可能と考えられた.風疹の抗体陽性者は79.4%であり,男女差はなかった.流行性耳下腺炎の抗体陽性者は59.3%と麻疹に次いで低く,麻疹同様院内に持ち込まれた場合アウトブレイクの危険性が懸念された.

    抗体価が基準に満たない20代職員を対象にワクチン接種歴を調査した結果,麻疹では66.7%,風疹では56.5%の職員にワクチン接種歴があることが分かった.これは,1次性ワクチン不全および2次性ワクチン不全の両者を含むワクチン不全者の存在を示唆する.流行性ウイルス感染症の免疫獲得状況は抗体価測定とワクチン接種歴を併せて確認することが重要であり,今後は全職員を対象にワクチン接種歴を調査し,その結果をもとにワクチン接種を推奨していく必要がある.

  • 鈴木 英二, 西條 純, 小口 真実, 堀 勝幸, 村井 健美, 南 希成
    2021 年 36 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/09/24
    ジャーナル フリー

    小児がん患者は,疾病や抗がん剤治療の副作用により感染リスクが高く,バンコマイシン(VCM)はその感染症治療薬として使用される.今回当院小児がん患者のVCM投与量およびトラフ値の変化と抗菌薬Therapeutic drug monitoring(TDM)ガイドラインとの比較を後方視的に検討した.1~6歳の29例では投与量は45.8 mg/kg/dayから61.8 mg/kg/day,投与回数は1日3回から4回にそれぞれ増加し,トラフ値は5.0 μg/mLから10.0 μg/mLへ上昇した.血清クレアチニンは0.21 mg/dLから0.20 mg/dLと変化しなかった.7~12歳の9例では投与量は46.1 mg/kg/dayから60.0 mg/kg/dayへ増加,投与回数は1日4回で変化なく,トラフ値は6.5 μg/mLから10.2 μg/mLへ上昇した.血清クレアチニンは0.24 mg/dLから0.25 mg/dLと変化しなかった.小児がん患者において,1~6歳では61.8 mg/kg/day(15.5 mg/kg,6時間毎),7~12歳では改訂版抗菌薬TDMガイドライン通り60.0 mg/kg/day(15.0 mg/kg,6時間毎)で投与を開始し,TDMを行うことでVCMを10 μg/mL以上の目標トラフ値に到達する可能性が示唆された.

  • 佐々木 康弘, 栗島 彬, 天野 美里, 金丸 亜佑美, 山口 明子, 高安 博史, 羽田野 義郎, 矢野 雅隆
    2021 年 36 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/09/24
    ジャーナル フリー

    抗菌薬適正使用支援として,「抗菌薬の事前承認制」と「介入とフィードバック」が推奨されている.本邦における薬剤師による「介入とフィードバック」として全静注抗菌薬を対象に行った報告は大規模病院からのものはあるが,中規模病院からの報告はない.本研究では,中規模病院における全静注抗菌薬処方後監査を実施することによる全静注抗菌薬の変化を調査した.全静注抗菌薬は,1000患者あたりの抗菌薬投与日数(DOT/1000pd)が248.6日から217.1日へ(12.7%)減少した(p<0.05).さらに,抗緑膿菌活性がある抗菌薬は,DOT/1000pdが60.0日から35.5日へ(40.8%)減少した(p<0.01).1000患者あたりの全抗菌薬にかかる費用は約5万円(18.4%)減少した(p<0.05).中規模病院において薬剤師による全静注抗菌薬処方後監査は,広域抗菌薬を中心とした抗菌薬の減少をもたらした.

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