【背景・方法】ペン型インスリン注入器は注射時に血液逆流リスクがあるため,空打ち後から投与前までの針刺しにおいても,血液媒介病原体の伝播リスクが生じる.A病院では,ポスター教育やインスリン針の新規採用により,職業感染予防に努めてきた.血液逆流リスクを認識していない看護師は投与前針刺し事故を報告しない可能性があるが,沖縄県内の現状は不明である.そこで本研究では,県内の病院勤務看護師におけるリスク認識の現状を明らかにすること,また,A病院での教育後の変化も副次的に評価することを目的としてWebアンケートを実施した.有効回答者をA病院看護師(A看)と他施設看護師(他看)に分け,インスリン業務の手順や血液曝露の認識を分析した.
【結果】A看154名,他看230名から有効回答を得た.血液曝露認識率はA看72.1%,他看37.0%となり,有意差が見られた(p<.001).空打ち後のリキャップの内訳は,Aでは片手,他看では両手リキャップが主な方法だった.
【考察】他看では,空打ち後の両手リキャップ時の針刺しが,血液曝露と認識されず見逃される可能性がある.A看では,ポスター教育や針の新規採用が,認識や行動の変化に寄与したと考えられる.血液逆流リスクについて,米国でポスターによる注意喚起が行われているが,日本では文書に限られ,その発出頻度も低い.認識向上には継続的かつ視覚的な教育が必要である.
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