日本環境感染学会誌
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最新号
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総説
  • 坂本 史衣
    2019 年 34 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    カテーテル関連尿路感染(Catheter-associated urinary tract infections:CAUTI)は医療関連感染の10~20%を占める.近年,CAUTIの主要なリスク因子の一つとして,カテーテル留置期間の長期化が注目されており,専門組織が発行するCAUTI予防のためのガイドラインやガイダンスは,カテーテルの使用制限を含む多角的な取り組みを行うよう推奨している.本稿では米国医療研究・品質調査機構(Agency for Healthcare Research and Quality:AHRQ)が開発した包括的プログラムを参考にしながら,根拠に基づくCAUTI予防策について解説する.

proceedings
  • 大曲 貴夫
    2019 年 34 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    薬剤耐性菌は世界的に大きな問題である.2011年の世界保健機関の年次総会にて,Antimicrobial resistance(AMR)が主たる議題として取り上げられた.以降,AMRを世界的な健康危機と認識して対策を打つための活動が展開されている.2015年5月の世界保健総会では,薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクションプランが採択され,加盟各国は2年以内に薬剤耐性に関する国家行動計画を策定することを求められた.これを受けて日本においても政府により2016年4月に薬剤耐性(AMR)アクションプランが策定された.

    本プランにより今後感染対策は大きく様変わりする.地域連携の枠組みは院内のみならず地域を大きく巻き込む地域ネットワークによって支えられていくようになる.感染対策に関するサーベイランスは地域もその範疇に入れてさらに充実が図られ,地域ネットワークで活用されるようになる.そして感染症の診療は更に質の向上が図られる.

    アクションプランの実行により日本の医療現場における感染症対策は大きく変わる.AMR対策で築かれていく体制と対策は,病院だけではなく様々な医療の場における感染防止対策を対象とし,AMRだけを対象とするだけでなく様々な感染症の問題を対象とする形になる.これは未来に向けて持続可能な医療環境の構築に必ず大きく貢献するはずである.

  • 菅原 えりさ
    2019 年 34 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    わが国の病院清掃の委託率は86.1%で,清掃業務を事業者に委託するのは当たり前の時代になった.

    医療関連感染制御にとって病院清掃が欠かせない要素であることは周知の事実だが,その一端を担う清掃受託事業者の感染制御の知識や技術は必ずしも十分ではない.最近では,病院側の要求に清掃受託事業者が応えきれないことがしばしば起こり,ICTのストレスとなっていることがあるが,これは清掃委託事業者だけの問題ではない.

    筆者は,受託事業者が実施する病院清掃がICTの要求を満たすためには3つの責務があると考えている.一つはICTが契約時に主体的に関与すること,次は清掃受託事業者が契約通りに仕様書を遵守した清掃を実施すること,そして最後はICTが責任を持ってインスペクションしフィードバックすることである.このようにICTは委託前から終了まで関与する必要がありその役割は大きい.ファシリティマネジメントはICTの業務のひとつである.自施設の清掃品質を向上させるためには,清掃受託事業者への改善要求だけでなく,自らを見直す必要がある.

  • 三﨑 貴子
    2019 年 34 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    近年の交通網の発達や社会環境の変化とともに,新興・再興感染症はいつ国内に持ち込まれるかわからない脅威となっている.しかしながら,容易に伝播し重症化する新興・再興感染症の輸入例であったとしても,初発症状は発熱や呼吸器症状など国内で普通に見られる感染症と何ら変わりがないことが多く,医療機関での初診時のチェックをかいくぐり,しばしば院内感染や市中への感染拡大の可能性をはらむ.

    常に決め手になるのは「疑う」ことであり,旅行歴を含む詳細な病歴の聴取や適切な時期の適切な検体を正しい方法で採取して診断に足る検査を行うことである.また,患者と対峙する医療従事者は日頃から必要な予防接種を確実に受けておき,まずは標準予防策を徹底してこれらの感染症に備える必要がある.さらに,確定診断の後は感染源や感染経路の特定により自らへの感染予防と拡大の防止に繋げなければならない.

    我々は,麻疹や中東呼吸器症候群(MERS),インフルエンザA(H7N9)など国内外で見られた過去の事例に学び,院内感染する輸入感染症に対して「感染制御におけるBest Practice」を実施する使命があると考える.

原著
  • 松木 祥彦, 石毛 宏治, 石田 雅也, 跡治 江理奈, 風間 健美, 谷平 哲哉, 荒木 和憲, 渡部 多真紀, 渡辺 茂和
    2019 年 34 巻 1 号 p. 28-39
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    多剤耐性菌の出現は,感染症の重症化や入院期間が延長するなど医療経済的にも大きな負担を生じる.我々は,アンチバイオグラムを用いて有効性の高い抗菌薬を医師に提案することで,抗緑膿菌活性を有する抗菌薬の使用割合を減少させた.また,入院期間が長い肺炎に注目し,クリティカルパス(CP)を用いて治療の標準化を行った.CPの導入は,不適切な抗菌薬の使用により治療効果が十分に発揮されない症例や起因菌が特定できない症例に対して使用していたカルバペネム系抗菌薬を削減した.その結果,抗緑膿菌活性を持つ抗菌薬に対するカルバペネム系抗菌薬の% antimicrobial use densityと% days of therapyは,活動開始前は,それぞれ43.7%と34.1%であったが,活動開始後は,23.6%と25.8%に減少した.Pseudomonas aeruginosaに対する抗菌薬感受性率(%)は,cefepime(活動開始前:71.3/活動開始後:93.6),meropenem(64.4/92.9),doripenem(65.0/94.7),ciprofloxacin(68.8/92.9)と,それぞれ有意に改善した(P<0.01).今回我々が行った活動は,診療の質を損なわずに広域スペクトラム抗菌薬の使用を減少させ,P. aeruginosaの抗菌薬感受性率を改善させたと考えられた.

  • 楠見 ひとみ, 遠藤 英子
    2019 年 34 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,助産師が分娩介助時に着用するフェイスシールドへの血液曝露の実態を調査し,分娩特性との関連から顔面への血液曝露リスクを明らかにすることを目的とした.分娩介助時に助産師が着用したフェイスシールドへの血液曝露の検証にはルミノール反応を用いた.調査期間中の経膣分娩件数は161件で,そのうちの70件の分娩で着用されたフェイスシールドを収集した(収集率43.5%).収集したすべてのフェイスシールドに血液曝露が確認され(100%),曝露数は平均26.6個(SD 20.1,range 5-125)であった.フェイスシールドの区分別の曝露数は,マスク部18.6個(SD 17.0,range 0-116),眼周囲部2.8個(SD 17.0,range 0-22),額部3.3個(SD 3.7,range 0-17),右側面部2.7個(SD 4.2,range 0-20),左側面部1.1個(SD 1.9,range 0-10)であった.助産師のフェイスシールドの着用時間は平均41.5分(SD 30.5,range 11-141)で,最短の11分であっても血液曝露を認めた.本研究では,収集したすべてのフェイスシールドに血液曝露を認め,血液曝露数の関連要因は会陰切開であることが明らかになった.分娩介助は顔面への血液曝露リスクが非常に高く,標準予防策として顔面防護の必要性が示唆された.

  • 平光 良充, 李 宗子, 吉川 徹, 木戸内 清, 満田 年宏, 網中 眞由美, 細見 由美子, 黒須 一見, 國島 広之, 森澤 雄司, ...
    2019 年 34 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は医師と看護師の針刺し報告率を年齢層別に比較することである.エピネット日本版サーベイランスに参加している118施設に対し,2013年4月から2015年3月までに自施設に報告された針刺しについてデータ提供を求めた.86施設から6,164件の提供があった.すべての報告のうち,医師または看護師による報告は4,455件であった.本研究では,そのうち曝露源患者が判明した3,703件(医師1,326件,看護師2,377件)を対象として,報告事例のうち曝露源患者がHCV検査またはHBs抗原検査陽性である割合(肝炎ウイルス陽性針刺し割合)を算出した.肝炎ウイルス陽性割合は,医師が23.8%(95%信頼区間:21.5-26.0%),看護師が13.9%(12.5-15.3%)で医師の方が高く(p<0.01),年齢調整後でも医師の方が高かった(p<0.01).また,看護師では年齢層と肝炎ウイルス陽性針刺し割合に関連はみられなかったが(p=0.77),医師では年齢層が高いほど肝炎ウイルス陽性針刺し割合が上昇していた(p<0.01).曝露源患者が感染症検査陰性の場合には針刺しが未報告になりやすいことが先行研究により明らかにされている.本研究結果から,医師は看護師より報告率が低く,医師では年齢層が高いほど報告率が低下すると考えられた.医師に対して針刺しをすべて報告するよう啓発することが必要である.

報告
  • 南里 純代, 矢野 久子, 安岡 砂織, 貝崎 亮二, 大庭 宏子
    2019 年 34 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    尿路感染症は,医療関連感染の中で高い発生率を占め,そのうち約80%は尿道留置カテーテルによる.今回,尿道カテーテルを留置した全入院患者(小児は除く)970名のデータからカテーテル使用比,尿道留置カテーテル関連尿路感染症(catheter-associated urinary tract infection,CAUTI)発症率の算出,CAUTI発症/疑い患者の状況を検討した上で,感染対策活動の改善点を明らかにした.

    調査期間中のカテーテル使用比は0.11,CAUTI発症率は0.36(1,000catheter-day)であった.研究対象施設はCAUTI予防のために4週間以上の尿道カテーテル長期留置患者を対象とした院内ラウンドを週に1回実施している.ラウンドの実施はカテーテル使用比,CAUTI発症率の低減に寄与している可能性がある.今回の検討では,CAUTI発症/疑い患者8名のうち5名が4週間以上の留置であった.院内ラウンド対象者を現状の4週間から短縮すること,長期留置者への介入の強化を行うことで,さらなる改善が期待できることが示唆された.

  • 山本 容子, 原田 清美, 滝下 幸栄, 室田 昌子, 西内 由香里, 岩脇 陽子
    2019 年 34 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,The Health Action Process Approach(HAPA)理論を用いた新人看護師の手指衛生認知尺度の開発を試みることである.

    大学病院に勤務する看護師209名を対象に,手指衛生に関する質問紙調査を実施し,83名(39.7%)の有効回答を得た.

    最尤法,プロマックス回転を用いた探索的因子分析を行った結果,HAPA理論の主要な要素を含む20項目からなる5因子構造が得られた.累積寄与率は71.07%であった.因子は,手指衛生を実践するための自己効力に関連する項目について【セルフエフィカシー】,手指衛生をどのように意図しているかについて【意思】,手指衛生を実践する際の具体的な計画について【コーピングプランニング】と【アクションプランニング】,手指衛生を実践することによる成果について【アウトカム予期】と命名した.各因子のCronbach'sαは,それぞれ0.92,0.91,0.91,0.86,0.77であった.また,これらの構造について確証的因子分析を行った結果,GFI=0.772,AGFI=0.703,CFI=0.910,RMSEA=0.090であった.

    今後改良の必要性があるものの,HAPA理論の主要な要素を含む新人看護師の手指衛生認知尺度が開発された.

  • 鹿間 芳明, 山下 恵, 山口 直紀, 市川 雄一, 清水 祐一, 陸川 敏子, 秋葉 和秀, 今川 智之
    2019 年 34 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    当院では多剤耐性菌持ち込みによる院内伝播の防止を目的として,他院からの転院患者,および他院で治療歴のある緊急入院患者を対象とした入院時のスクリーニング培養を開始したので報告する.原則として入院当日に,担当医から説明文に沿って説明し同意を得たのちに,スワブで便検体を採取して培養した.対象菌種はカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE),バンコマイシン耐性腸球菌(VRE),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とし,いずれも選択培地を用いた.CRE選択培地でコロニー形成が見られた場合,確認検査を行ってカルバペネマーゼ産生菌(CPE)であることを確認した.2016年12月から2017年11月までの1年間で,245人に対して260回のスクリーニング検査を施行した.陽性例はCPE2件(0.8%),VRE0件,MRSA23件(8.8%)であった.CPE陽性患者はいずれも他院から手術目的で転院された患者で,入院時から退院時まで,手術室内を含めて接触感染予防策を継続して行うことができた.

    スクリーニング開始に先立ち,検査室の負担や予算の検討,医師・看護師への説明等を十分に行ったことにより,開始後も大きな混乱なく検査を継続できている.少数ではあるが陽性患者が見つかっており,持ち込み防止のためのスクリーニング検査は有用である可能性が示唆された.

  • 金﨑 美奈子
    2019 年 34 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2019/01/25
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    精神科において,集団発生時の感染対策上の困難に焦点を当てた先行研究はほとんどなく,その実態はあまり知られていない.今回,当院の精神科慢性期閉鎖病棟でインフルエンザB型の集団発生を経験し,感染対策上の困難に直面した.一般科病棟で行われている隔離などの感染対策が通用せず,迅速検査や抗インフルエンザ薬の予防投与は拒まれ,感染制御に苦慮した.精神科においては,インフルエンザが持ち込まれてしまった場合に講じる感染対策は未だ課題が多い.病棟の患者層によってもその課題は異なってくると考える.精神科特有の状況にあわせた実践可能な感染対策の模索が必要である.

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