日本環境感染学会誌
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最新号
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原著
  • 末松 真弥, 中嶋 敏紀, 元田 裕子
    2022 年 37 巻 2 号 p. 35-40
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル フリー

    Centers for Disease Control and Prevention(CDC)ガイドラインでは末梢静脈カテーテルの挿入部位を観察するため,滅菌透明フィルムドレッシング材を使用することが推奨されているが,輸液漏れを起こしやすい新生児への滅菌透明フィルムドレッシング使用に関する研究は少ない.透明フィルム固定と非滅菌テープ固定における輸液トラブル発症を比較し,透明フィルム固定が輸液トラブル発症のリスク因子になり得るかを解析した.新生児病棟入院児を対象とし前期(4か月)は非滅菌テープ固定,後期(4か月)は透明フィルム固定とし,固定から1週間以内に発生した輸液トラブルを記録した.治療終了前のカテーテル抜去をカテーテル不全とし主要評価項目とした.カテーテル挿入例は延べ239例で内77例(32%)は透明フィルム,162例(68%)がテープであった.カテーテル不全はフィルム群43例(56%),テープ群95例(59%)でほぼ同等の発症率であった.Cox比例ハザード分析にて,カテーテル不全発症リスク因子は高張輸液(ハザード比[95%信頼区間]8.31[3.03-22.80]),輸液速度3 mL/時以上(2.61[1.75-3.91])で,フィルム固定は有意なリスク因子ではなかった.新生児においても透明フィルムドレッシングは安全に使用できる可能性がある.

  • 吉川 寛美, 脇本 寛子, 矢野 久子
    2022 年 37 巻 2 号 p. 41-47
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル フリー

    保育所を利用する子どもたちは接触感染のリスクが高く,共有物品である玩具の衛生管理は重要である.玩具の衛生管理の実態と課題を明らかにするため,保育所2施設において玩具の衛生管理について質問紙調査を行い,玩具(5材質;木製,布製,軟質プラスチック製,硬質プラスチック製,紙製)の汚染度を保育所での通常の洗浄(水拭き/水洗い/洗濯機洗い)前後に測定した.汚染度はアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate;ATP)+アデノシン一リン酸(adenosine monophosphate;AMP)量を測定し,相対発光量(Relative Light Unit,以下RLU)として数値化した(以下,ATP値).その結果,玩具の洗浄前後のATP値(中央値)は前8,454 RLU(5材質385個),後559 RLU(洗浄されていなかった紙製玩具を除く4材質315個)であり,洗浄により有意に低下していた(p<0.001).洗浄前後のATP値の減少率は93.7%(4材質315個)であり,木製,軟質プラスチック製玩具では「水拭き」よりも「水洗い」(木:p<0.001,軟質プラスチック:p=0.022),布製玩具では「水洗い」より「洗濯機洗い」において減少率が高かった(p=0.008).木製玩具は「水拭き」後のATP値が高く,水洗いを行うなど効果的な管理を行う必要性が示唆された.

  • 髙橋 弘泰, 高嶋 祥匡, 藤本 佐希子, 渡邉 一正, 奥村 明彦
    2022 年 37 巻 2 号 p. 48-56
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル フリー

    血液培養陽性化時間(time to positivity:TTP)は臨床転帰と関連する因子と考えられている.本研究では,腸内細菌科細菌血流感染症患者における予後因子を明確にするため,TTPと臨床転帰との関連性を調査した.当院の1年間で腸内細菌科細菌血流感染症と診断された245例を調査対象とし,TTPやその他の臨床指標を解析した.TTPの最適カットオフ値はROC曲線にて11時間と算出された(感度91.7%;特異度68.7%;曲線下面積0.841).さらに14日以内の死亡に関連する因子をコックス比例ハザード回帰モデルで解析した.その結果,TTP ≤11時間(ハザード比19.6;p=0.006)とPitt bacteremia score(PBS)≥4点(ハザード比14.6;p<0.001)の2項目が有意な独立予後不良因子と示された.この2項目を用い,PS(prognostic score)を算出した.2項目とも該当しない事例をPS 0,1つが該当する事例をPS 1,2項目とも該当する事例をPS 2とした.14日生存率はPS 0(n=155)で99.4%,PS 1(n=81)で93.8%,PS 2(n=9)で33.3%であった.PSが高いほど14日生存率は不良であった.これらの解析から,TTPとPBSを組み合わせたPSは,予後推定に有用であると考えられた.

報告
  • 陶山 明日香, 鈴木 佳子
    2022 年 37 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル フリー

    板橋中央総合病院(以下,当院)は,2018年の4月の診療報酬改定で新設された抗菌薬適正使用支援加算後の2018年5月からASPを導入した.抗菌薬適正使用支援プログラム(antimicrobial stewardship program:ASP)は多くの施設で導入され,広域抗菌薬の使用量減少や薬剤感受性率回復の報告がされている.本研究では,診療報酬改定を契機に抗菌薬適正使用支援チーム(antimicrobial stewardship team:AST)を組織した市中病院のASP導入による効果を検証するため,当院採用の抗緑膿菌活性のある抗菌薬の使用量を主要評価項目,緑膿菌の薬剤感受性の変化とClostridioides difficile感染症(CDI)発生率,経済的効果,ASTによる介入症例の受諾率を副次評価項目として後ろ向き調査を実施した.ASP導入後に注射抗菌剤の薬剤費の減少とカルバペネム系抗菌薬の使用量を半減することができた.

  • 齋藤 千愛, 吉田 謙介, 金子 奨太, 磯辺 浩和, 児玉 泰光
    2022 年 37 巻 2 号 p. 62-68
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル フリー

    歯性感染症の治療抗菌薬に関しては,日本感染症学会/日本化学療法学会感染症治療ガイド(治療抗菌薬ガイドライン)で推奨抗菌薬や投与期間などが示されているが,手術部位感染(SSI)治療抗菌薬に関するガイドラインはない.そこで今回,下顎埋伏智歯抜歯後のSSI治療抗菌薬について治療抗菌薬ガイドラインを参考に後ろ向きに調査した.2015年1月~2019年12月に新潟大学医歯学総合病院歯科外来で下顎埋伏智歯抜歯後にSSIと診断された患者を対象に,SSI治療抗菌薬の種類,アモキシシリン(AMPC)の1回用量,投与期間,細菌検査の有無などについて調査した.その結果,SSI発生率は1.6%(96/5,940症例)で,治療抗菌薬ガイドラインで推奨されているAMPC投与は経時的に増加し,2019年では70.4%(19/27症例)であった.AMPCが選択された症例の1回用量の多くは250 mg,投与期間は4日間,細菌検査の実施率は11.5%(11/96症例)であった.治療抗菌薬ガイドライン上,切開が必要とされる重篤なSSIでは,AMPCの1回量は500 mgとされているが,当該症例での1回用量は全て推奨用量の半量であった.本調査からSSI治療抗菌薬投与期間はガイドラインに沿っていたものの,治療抗菌薬の選択,AMPCの1回用量および細菌検査の実施については改善の余地があると思われた.

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