抄録
Stenotrophomonas maltophiliaは悪性疾患や長期入院,広域抗菌薬投与などの危険因子をもつ免疫抑制患者においては,一旦発症すると致死的となる日和見病原体として重要である.2007年6月,当院の無菌病棟において,S. maltophiliaのアウトブレイクを認めた.病棟内の環境調査を行った結果,風呂場の椅子,シャワーヘッド,自動おしぼり機から同菌が分離された.患者検体より分離されたS. maltophilia 4株と環境調査で分離されたS. maltophilia 4株に対して分子疫学的解析を行ったところ,血液より分離された2株および自動おしぼり機内の貯留水から分離された株が一致し,同一株と考えられた.以上の結果より今回のアウトブレイクには自動おしぼり機が関与していると考えられた.またこの事例をきっかけにその他の病棟に設置されていた自動おしぼり機内の貯留水についても調査した結果,多種類の菌種が分離された.他の病棟での医療関連感染は確認できなかったが,病棟内での水を使用する器具に対しては十分な注意が必要であると考えられた.