日本環境感染学会誌
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原著論文
薬剤供給方法の変更による術中抗菌薬予防投与の適正化
小井土 啓一島田 知子平松 玉江
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2009 年 24 巻 6 号 p. 395-399

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抄録
  手術部位感染予防には抗菌薬の予防投与が重要である.当院感染対策チームでは,手術時のcefazolin(CEZ)およびcefmetazole(CMZ)の3時間毎投与を推奨してきたが,長時間手術では追加投与が適切に行われていないケースがみられた.そこで,抗菌薬供給方法を処方せんによる個人セット払いから手術室への定数配置へ変更し,追加投与実施状況の改善を試みた.併せて術前・術中投与の指示出し用スタンプを各病棟に配置した.供給方法変更前(2005年8月),供給方法変更後(2006年8月),ならびに電子カルテ稼動後(2007年8月)の3期間において,6時間を越える手術での抗菌薬術中追加投与の実施割合を調査した.各期間における対象件数と平均手術時間は2005年45例483分,2006年46例524分,2007年44例510分であった(p=0.46).必要投与回数の総和は各期間でそれぞれ99回,114回,106回であったのに対して,実投与回数の総和(実施率)は20回(20.2%),101回(88.6%),104回(98.1%)と,供給方法変更後に増加した(p<0.001).なお,2007年における前投与からの投与間隔は平均181分であり,210分を超えたのは全104回中2回のみであった.抗菌薬の供給を手術室定数配置に変更するなどの介入によって,抗菌薬術中追加投与の実施率を劇的に改善することができた.
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© 2009 一般社団法人 日本環境感染学会
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