日本環境感染学会誌
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報告
重症心身障害者(児)の歯垢内日和見病原菌の検出状況を指標とした口腔ケアの評価
森 みずえ山本 満寿美千田 好子狩山 玲子
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2010 年 25 巻 2 号 p. 91-98

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抄録
  療育センター入所中の重症心身障害者(児)を対象に,歯垢内に存在する日和見感染症の主たる原因菌の検出状況を調査した.その後,検出菌種および菌数の減少を目的に,より消毒・除菌効果が高いと期待できる口腔ケア方法に変更し,その効果を細菌学的に評価した.対象とした障害者(児)56名のうち11名は観察室,45名はデイルームで医療・生活管理を受けていた.56名中24名の歯垢から,検査対象菌が1名につき1~3菌種検出され,主たる検出菌である MRSA(methicillin resistant S. aureus), Pseudomonas aeruginosa, Serratia marcescensの3菌種は,それぞれ14名(25.0%),14名(25.0%),5名(8.9%)に検出された.このため観察室とデイルーム別に変更した口腔ケア方法を障害者(児)全員に実施し,これら3菌種のいずれかが検出された20名の追跡調査を行った.ケア変更前/変更5ヶ月後の概算菌数別検出者数は,MRSA(+++1名/0名,++2名/0名,+11名/7名),P. aeruginosa(+++8名/0名,++5名/10名,+1名/2名),S. marcescens(+++5名/3名,+0名/1名)であった.変更した口腔ケア方法は,歯垢からの検出菌種と菌数の減少に一定の効果を認めたが,P. aeruginosa の除菌は困難であった.今後,重症心身障害者(児)の個々の口腔内の状態や検出菌種および菌数に応じた口腔ケア方法の開発を行う必要がある.
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© 2010 一般社団法人 日本環境感染学会
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