日本環境感染学会誌
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原著論文
血管内留置カテーテル挿入部位の皮膚消毒に関する検討
谷村 久美大久保 憲
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2010 年 25 巻 5 号 p. 281-285

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抄録
  血管内留置カテーテル挿入部位の皮膚消毒に用いる消毒薬として,わが国では10%ポビドンヨード(PVP-I)液が繁用されているが,欧米の臨床試験に基づくメタアナリシスにおいて,PVP-Iよりもクロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)のほうが血流感染の発生頻度が低いことが示されており,CDCのガイドラインでは2%CHG製剤を推奨している.我々はカテーテル挿入部位の皮膚を10 w/v%PVP-I液(10%PVP-I)あるいは1 w/v%CHG含有エタノール液(1%CHG-AL)にて消毒し,ドレッシング交換ないしカテーテル抜去時に挿入部周辺皮膚表面の細菌・真菌培養を行うとともに,血流感染の発生状況を調べた.試験参加の同意を得た患者85名(男性53名,女性32名)の皮膚表面細菌培養件数あたりの培養陽性数は,1%CHG-AL群97件中10例,10%PVP-I群84件中19例で,培養陽性率は1%CHG-AL群で有意に低かった(10.3% vs. 22.6%, P=0.024,カイ2乗検定,相対リスク0.456, 95%信頼限界0.225-0.925).また血流感染の発生は1%CHG-AL群43件中1例,10%PVP-I群50件中10例であった.以上,1%CHGエタノール製剤による皮膚消毒は,10%PVP-I製剤よりもカテーテル挿入部位の微生物数を減少させる効果が高く,血流感染の発生リスクを低減させる傾向がみられた.
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© 2010 一般社団法人 日本環境感染学会
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