日本環境感染学会誌
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原著
抗MRSA薬の適正使用に向けた取り組み
茂野 健司西島 睦子宮崎 真理子
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キーワード: 抗MRSA薬, TDM, 腎不全, 透析
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2011 年 26 巻 3 号 p. 135-141

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抄録

  腎排泄型の抗MRSA薬である,vancomycin(VCM), teicoplanin(TEIC), arbekacin(ABK)について,治療薬物モニタリング(TDM),処方鑑査の強化,TDM解析フローチャートの作成,透析患者への推奨投与方法周知を中心とした適正使用推進活動を行い,臨床効果の向上がみられたかを評価した.対象は適正使用推進前が72例,適正使用推進後(TDM実施群)が45例,適正使用推進後(TDM未実施群)が73例の計190例で,全対象の90.5%がCKD (慢性腎臓病)ステージ3 (中等度腎機能低下)以上であり,その中でも74.2%がCKDステージ5D (透析患者)である.CRPと体温から判定した有効率は,適正使用推進前が30.4%に対し,適正使用推進後が42.3%と改善傾向がみられた.TDM実施群での有効率は55.8%であり,未実施群の32.8%より有意に高かった.感染症別の有効率は,血流感染でTDM実施群が46.2%,未実施群が25.8%,肺炎でTDM実施群が50.0%,未実施群が26.3%,創感染でTDM実施群が85.7%,未実施群が33.3%と,いずれもTDM実施群で高く,創感染では有意差がみられた.各薬剤における有効率は,VCM, TEICのいずれにおいてもTDM実施群で高かった.TDMは進行したCKD患者への抗MRSA薬の安全な使用に有用で,治療成績を向上させた.

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© 2011 一般社団法人 日本環境感染学会
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