日本環境感染学会誌
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報告
産婦人科病棟における結核患者発生事例と対策—接触者健診を実施して—
三五 裕子山本 よしこ福田 修
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2011 年 26 巻 3 号 p. 157-160

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抄録

  2008年12月に当院産婦人科病棟で出産した25歳女性が,2009年2月に他院で肺結核と診断された.当院の産婦人科病棟では,出産当日より母児同室を行っている.そのため,新生児が患者と接触した可能性があり,早期に接触者健診を行う必要があった.発端者と接触した可能性のあるすべての母児を接触者健診の対象とした.その結果,同室・授乳室・1ヶ月健診での接触者11組(Aグループ),授乳室のみでの接触者10組(Bグループ)が対象となった.また,分娩介助を実施した職員2名も接触者健診の対象とした.Aグループを濃厚接触者とし,児に胸部エックス線撮影,血液検査を実施し,さらに,最終接触から2ヶ月後,児にツベルクリン反応(ツ反),母にクォンティフェロン® TB-2G (QFT)を実施した.Bグループは,児にツ反,母にQFTを実施した.接触者健診の結果,児のツ反は陰性,母のQFTは1名を除いて陰性であった.
  発端者は入院中より咳を認めマスクを着用していたが,抗酸菌検査は実施されていなかった.本事例を通し,若年であっても呼吸器症状のある患者に対し抗酸菌検査を実施し,早期に感染防止対策を実践する必要があると考えられた.また,効果的な接触者健診を実施するためには,職員教育,医療従事者間の連携が重要である.

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© 2011 一般社団法人 日本環境感染学会
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