抄録
多剤耐性菌の検出患者に求められる接触予防策と,患者周辺環境対策の推奨事項に関する遵守の実態を明らかにすることを本研究の目的とした.第三次救急指定を受けている5つの医療機関において,接触予防策の遵守については直接観察法で,患者周辺環境対策の実態については接触予防策の適用となっている患者の病室を担当する看護師への聞き取りによって,データを収集した.接触予防策遵守の観察総場面数は1,468であった.全施設における接触予防策の遵守率は入室時の手指衛生52.8%,手袋着用及び処分68.9%,ガウン着用及び処分78.7%,退室時の手指衛生75.5%であった.入室時の手指衛生は,病棟間で統計学上有意な差が見られ(p<0.001),ERとICUが共に低かった.職種間でも統計学上有意な差が見られ(p<0.001),医師の接触予防策遵守率が低かった.患者周辺環境の高頻度接触環境表面の清掃実施率は89.9~100.0%であり,1日あたり1~2回の頻度で適切に実施されていた.既存のガイドラインで推奨される接触予防策と患者周辺環境対策の遵守徹底が,院内アウトブレイクを未然に防ぐ上では必須であり,そのためには日頃から遵守の評価を定期的に実施することが重要である.