日本環境感染学会誌
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総説 (疫学・統計解析シリーズ)
6.デバイス関連感染サーベイランスデータの評価と分析
藤田 烈
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2014 年 29 巻 3 号 p. 155-163

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抄録

  サーベイランスとは,「特定の疾患や出来事についての発生分布や原因に関するデータを継続的,組織的に収集,統合,分析し,結果を改善することができる人々に,必要な情報をタイミングよく提供すること」1-3)と定義される活動である.近年,数多くの病院に感染制御活動を専門に行う部門(ICT:Infection Control Team)が設置され,その主要業務のひとつとして医療関連感染サーベイランスが行われるようになった.サーベイランスは,2007年に施行された改正医療法の中では医療関連感染対策における重要項目のひとつに位置づけられ4-6),さらに日本医療機能評価機構が行う病院機能評価事業においても必須項目として実施が強く求められている7).さらに,2012年の診療報酬改定で新設された感染防止対策加算の施設要件として感染防止対策チームの設置が求められるようになり,その日常業務としてサーベイランスが位置づけられたことで,サーベイランスに取り組む医療施設が近年急激に増加している.
  効果的なサーベイランスを行うためには,信頼性の高いデータを収集し,適切な方法で分析を行い,その結果を効果的な方法で現場職員にフィードバックしていく必要がある.特に,発生頻度の少ない医療関連感染症サーベイランスなどのデータを扱う場合には,対象となる感染症の疫学的な特性を正しく理解し,それを考慮した解析,評価,フィードバックを行うことが重要となる.さらに,サーベイランスデータの分析結果から新たに見出された知見を学会や論文上で報告するためには,統計学的手法を用いた適切な解析を行い,研究結果を正確に表現するとともに,結果の再現性や一般化可能性を評価,記述していく必要がある.
  本稿では,冒頭でデバイス(医療器具)関連感染サーベイランスの一般的な方法を簡単に紹介し,後に,デバイスサーベイランスデータの解析において考慮すべき疫学,統計上の問題,対処方法に関する解説を行う.

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© 2014 一般社団法人 日本環境感染学会
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