日本環境感染学会誌
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直接観察法を用いた手指衛生と手袋着脱のタイミングの遵守率上昇に向けた取り組み
鈴木 さつき村田 弘美
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2014 年 29 巻 4 号 p. 273-279

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抄録

  医療関連感染は主に医療従事者の手を介した接触感染により成立するため,手指衛生は感染管理上最も基本的かつ,重要な対策である.また,効果的な手指衛生は適切な手技だけではなくそのタイミングにある.当院は2010年より直接観察法による手指衛生のタイミングに関するサーベイランスを行い,遵守率は年々上昇傾向にあった.しかし,2012年にICUにおいてmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)のアウトブレイクが発生したため,手指衛生に加えて手袋着脱のタイミングについてもサーベイランスおよび啓発活動を行った.その結果,全項目の平均遵守率に有意差は見られなかったものの,90%から96%となり(p=0.096),本サーベイランス実施後はアウトブレイクの発生は見られず,MRSAの検出率は4.56件/1,000 patient daysから1.8件/1,000 patient daysと有意な減少を認めた(p=0.002).本検討では直接観察法によるサーベイランスの継続とそれを通じたマンツーマン指導の実施,ポスター掲示で視覚的に学習する機会を設ける,といった多方面からの教育に加え,環境整備やスタッフ間の協力を得るなどの業務改善が手指衛生・手袋着脱のタイミングに関する遵守率の上昇と維持,MRSAの新規検出率の低減に効果的であることを示唆している.

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© 2014 一般社団法人 日本環境感染学会
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