抄録
Antimicrobial stewardship program(ASP)は,感染症の起因菌や感染部位を考慮した適切な抗菌薬の使用を促進することを意味する.今回,我々は薬剤師のASPにおける活動の一環として,感染対策ソフトを利用して情報を短時間で効率的に収集して抗菌薬適正使用支援を行った.2013年1月から2014年12月までの2年間において,支援件数は1年目81件であったが,2年目は272件と約3.4倍に増加した.その内訳は「de-escalation」が最も多く,次いで「投与の終了提案」,「empiric therapyにおける新規抗菌薬投与・変更提案」が多かった.コンサルテーション件数は1年目43件であったが,2年目は186件と約4.3倍に増加した.支援の結果,1年目と比較して2年目ではtazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC)のantimicrobial use density(AUD)は有意に低下し,Pseudomonas aeruginosaのTAZ/PIPCに対する耐性率も有意に低下した.TAZ/PIPCのAUDが低下して,それに伴ってP. aeruginosaの耐性率も低下したと推測される.薬剤師が感染対策ソフトを活用して,効率的に感染症治療に参画することによって抗菌薬の適正使用が推進できることを示していると考えられた.