抄録
特別養護老人ホーム(特養)で働く職員のオムツ交換の場における手指衛生の実態を明らかにし,手指衛生教育を検討した.
特養4施設に勤務する職員115名を対象に,観察調査と自記式質問紙調査によって調査を行った.
観察調査による手指衛生の実施率は3.5%であり,2004年に厚生労働省が行った「高齢者介護施設における感染管理のあり方に関する研究」におけるオムツ交換の場における手洗い実施率64.3%,アルコールベースの手指消毒73.4%という結果と比較して非常に低率であった.しかし,手袋着用は100%であり,手指衛生の代用としていると考えられた.一方で,自記式質問紙調査による手指衛生の実施率は90.1%であり,職員の認識と実際の行動に違いがあることが明らかとなった.これは,手袋交換の適切なタイミングにおいても同様の結果であり,手指衛生に関する調査は,観察調査が望ましいといえる.特養における手指衛生教育は,手袋特性に関する知識を踏まえた上での手洗いの必要性と,手指衛生および手袋交換の適切なタイミングについて,業務内で実践可能な方法を提案する必要がある.