日本環境感染学会誌
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原著論文
一般病棟における除菌剤を用いた環境表面清拭回数と付着細菌数の減少効果に関する検討
伊藤 重彦中川 祐子南 博子橋本 治堀江 恭子樋渡 美紀諸永 幸子元石 和世谷口 初美松本 哲朗
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2016 年 31 巻 3 号 p. 165-172

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抄録

 一般病棟における除菌剤含有ワイプによる清拭回数と環境表面付着細菌数の減少効果について検討した.
 1施設の外科病棟において,複数箇所の環境表面を対象に付着細菌数を測定した.その結果,一般細菌生菌数(生菌数)が多かった病棟患者用トイレの便座,洗浄操作パネル,手洗い場蛇口周囲の3箇所の環境表面を対象に,6施設が参加して,清拭回数と除菌効果について検討した.各施設が準備した2つのトイレをA群(1日1回清拭群),B群(1日2回清拭群)の2群にわけ,除菌剤含有ワイプを用いて清拭した.連続した5日間において.調査1日目,2日目,5日日朝の清拭前に環境表面から検体を採取し,全菌数,生菌数,アデノシン三リン酸(ATP値)を測定した.清拭方法は6施設で統一し,ペルオキソー硫酸水素カリウム(酸化剤)配合剤含有ワイプを用いた.
 洗浄操作パネル,手洗い場蛇口周囲において,B群の生菌数は調査1日目,2日目,5日日にかけて減少した(p<0.05).ATP値は,洗浄操作パネル,手洗い場蛇口周囲でA群,B群ともに低下した(p<0.05).手洗い場蛇口周囲の全菌数,生菌数は,清拭直後に有意な減少を認めなかった.
 除菌剤含有ワイプによる清拭回数を1日1回から1日2回に増やすと,一般病棟患者用トイレの複数箇所において環境表面全菌数,生菌数が経日的に減少した.

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© 2016 一般社団法人 日本環境感染学会
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