日本環境感染学会誌
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抗菌薬適正使用評価のための分析フレームワークの構築
山中 直子今村 陽子福田 治久
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2016 年 31 巻 6 号 p. 390-396

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抄録

 抗菌薬の不適切な使用は感染症治療の長期化および薬剤耐性菌を増加させる.治療困難な感染症の増加という負の連鎖を生み,医療費の増大を招く.そのため,抗菌薬の適切かつ適正な使用の推進が強く求められている.本研究では,多くの急性期病院において作成されている厚生労働省院内感染サーベイランス事業検査部門データ(JANISデータ)とDPCデータを用いたデータベースを作成した.さらに,抗菌薬適正使用の判断根拠としてサンフォード感染症ガイドを参照することで,抗菌薬適正使用評価のための分析フレームワークを構築した.当該フレームワークを用いて,当院の抗菌薬適正使用状況を評価し,薬剤費削減効果を推定した.なお,解析対象症例は,DPCデータの主傷病名が「腎盂腎炎」の入院例とした.
 解析対象となった45例中,適正使用例は21例(46.7%)であった.抗菌薬使用が不適正と判定された症例において,仮に適正化を進めた場合の薬剤費削減効果は,1レコードあたり10,308円と推定された.
 本研究の成果は,既存のJANISおよびDPCデータを用いて抗菌薬適正使用の評価および薬剤費削減効果を検討可能なフレームワークを提示したことにある.薬剤耐性菌対策の一環として,多施設を対象にした抗菌薬適正使用についての解析等に活用できる可能性が示唆される.

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© 2016 一般社団法人 日本環境感染学会
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