日本環境感染学会誌
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原著
介護老人保健施設に従事する介護職員の手指衛生の関連因子
中島 順一朗三橋 睦子
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2017 年 32 巻 4 号 p. 193-200

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抄録

本研究は介護老人保健施設(老健)に従事する介護職員の手指衛生の実際と関連因子を明らかにし手指衛生を改善するための示唆を得ることを目的に,A県5老健の介護職員140名の中で選定基準を満たす95名を対象に,構成的観察法と質問紙法を用いてデータ収集を実施した.95名の手指衛生668場面を観察した結果,手洗い487場面(73%)の手洗いの平均時間は15.6±7.7秒.手指消毒は181場面(27%)であった.手指衛生に関連する因子では,忙しさが手洗い時間(β=-0.527,p=0.001)と手指衛生の頻度(β=0.362,p=0.001)に最も関連し,多忙になると手洗い時間は減少し(p=0.001)手指衛生の頻度は高まった(p=0.001).忙しさ以外に手洗い時間には年齢(β=0.324,p=0.001)と知識(β=0.204,p=0.024)が関連し,手指衛生の頻度には経験が関連していた(β=0.248,p=0.024).また感染予防の態度が前向きな者は態度が後ろ向きな者より手洗い時間が長かった(p=0.001).介護職員の手指衛生の実際は手指消毒より手洗いが多く手洗い時間は短い結果であった.そのため除菌効果が高い手洗い方法の習得を図り,多忙な状況では手洗いより時間がかからない手指消毒を優先するよう教育を行い,年齢,経験,知識,態度に配慮した手指衛生改善の取り組みの必要性が示唆された.

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© 2017 一般社団法人 日本環境感染学会
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