日本環境感染学会誌
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原著
周産期看護従事者における職業感染対策の教育状況,血液・体液曝露の実態―診療体制による比較と課題―
渡邉 さゆり内山 正子吉森 容子佐山 光子
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2018 年 33 巻 3 号 p. 87-93

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抄録

周産期看護従事者の職業感染対策に関する教育状況,血液・体液曝露の経験,針刺し・切創経験と報告書の有無について,診療体制による違いと課題を明らかにすることを目的とした.2014年,協力の得られた新潟県内25の分娩取扱医療機関の周産期看護従事者430名を対象に,郵送による無記名自記式質問紙調査を実施した.産婦人科の他,複数の診療科を有する病院勤務者を複数診療科群,産婦人科単科病院又は診療所勤務者を産婦人科単科群とし,2群を比較した.複数診療科群148名,産婦人科単科群118名の有効回答を得た.両群とも7割以上が職業感染対策に関する教育経験を有していた.産婦人科単科群は所属施設内で標準予防策に関する教育機会が少なかった(p<0.001).分娩介助時の皮膚・粘膜曝露は両群とも9割以上に及び,両群間で有意差は認められなかった.過去1年間の針刺し・切創は複数診療科群3.4%,産婦人科単科群12.9%に経験があった(p=0.005).複数診療科群の98%に針刺し・切創報告書が設置されていたが,産婦人科単科群では77%に留まった(p<0.001).診療体制によらず,周産期看護従事者は血液・体液曝露機会が多く,職業感染対策が十分とは言えない状況が示唆された.産婦人科単科施設勤務者に対する標準予防策の研修,報告書の整備を含む針刺し・切創,皮膚・粘膜曝露予防対策の強化が課題と考えられた.

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© 2018 一般社団法人 日本環境感染学会
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