日本環境感染学会誌
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「WHO手指衛生改善のための多角的戦略」を活用した重症心身障害児(者)病棟における手指衛生改善の取り組み
鈴木 由美森野 誠子山本 重則篠﨑 文信
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2018 年 33 巻 4 号 p. 143-160

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抄録

近年の重症心身障害児(者)病棟(以下,重症児(者)病棟)には人工呼吸器使用者など多剤耐性菌保菌リスクの高い重症児が多く,感染対策は重要である.一方,家庭的な風土の中,介助員・保育士等の非医療職も含めた多職種が直接患者のケアを行っている.このような状況下,当院のこれらの病棟でのアルコール手指衛生剤(以下AHR)使用量は大変少なかった.このため2014年度からWHO「手指衛生改善のための多角的戦略」を採用し,「段階的アプローチ」に則り「多角的戦略の5つの構成要素」を活用して病院全体として改善に取り組んだ.その結果,重症児(者)病棟A(60床)における年間平均AHR使用量は2.9(2012年)→4.2(2013年)→10.1(2014年)→15.0(2015年)→26.7 L/1000患者/日(2016年),同病棟B(60床)で2.2→2.8→5.5→11.8→18.6 L/1000患者/日と増加した.本戦略の3つの要素のうち「5つの瞬間」がよく知られているが,取り組みの開始と継続の方法を具体的に示す「段階的アプローチ」も,スムーズな導入と持続的な改善のために重要と考えられた.また「多角的戦略の5つの構成要素」や「自己評価フレームワーク」の項目を,システムやハードの整備を優先し,自施設に合わせた工夫をして取り組むことは手指衛生の改善に効果的と考えられた.

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© 2018 一般社団法人 日本環境感染学会
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