日本環境感染学会誌
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報告
手術棟で発生したハエの発生源の調査および対策
彼谷 裕康平坂 真悟清水 直美
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2018 年 33 巻 6 号 p. 290-295

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抄録

ダニや蚊などの節足動物はウイルス性出血熱やデング,ジカ熱などの病原体を媒介することはよく知られているが,ハエも病原体を媒介する可能性がある.今回,我々感染対策チーム(以下ICT)は単一施設において,ハエの目撃情報を受け,手術棟でのハエの調査を行い,発生源の解明と対策を行ったので報告する.2015年9月から2016年10月までの間に,手術棟に捕虫器を6台設置し,1か月毎に捕獲されたハエの数をカウントし,分類を行った.調査開始した最初の1か月間に一番数が多く計344匹で,分類ではノミバエが多かった.採取場所ではノミバエについてはスタッフ控室で115匹と最も多く,チョウバエについては未使用のベッド洗浄機の周辺で11匹と多かった.ICTが調査を行ったところ,ノミバエはスタッフ控室の食べ残しの食品に関連し,チョウバエは未使用のベッド洗浄機の排水配管との関連が考えられた.ICTが介入し,残飯の整理整頓を徹底し,ベッド洗浄機の排水配管の洗浄,定期的な排水,最終的にベッド洗浄機の撤去を行ったところ,翌月以降は減少し,1年後も減少したままであった.捕獲されたハエの培養では,MRSAやESBL産生菌など耐性菌は見られなかった.病院内でハエが発見された場合には,発生源を早急に調査し,ハエの発生を防ぐため,できるだけ早くICTが介入する必要があると考えられた.

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© 2018 一般社団法人 日本環境感染学会
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