日本環境感染学会誌
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原著
インフルエンザワクチンにおける皮下注射・筋肉注射の差異―発症率・接種時疼痛・副反応の前向きコホート観察研究―
馬嶋 健一郎古谷 直子細川 直登
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2021 年 36 巻 1 号 p. 44-52

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抄録

季節性インフルエンザワクチンの接種法は本邦では皮下注射(皮下注)であるが,海外では局所副反応が軽度で抗体価上昇が良好なため筋肉注射(筋注)が推奨されている.しかし,皮下注・筋注での発症予防効果の差までは明らかではなく,接種時の疼痛の差異は今まで検討されていない.当院は病院職員と看護学生への接種が皮下注・筋注の希望選択となっており,発症率,接種時疼痛,接種後副反応の接種法による違いを前向きコホート観察研究で調査を行った.病院への発症者報告は皮下注11.3%(65/574),筋注8.2%(258/3147)で,有意に筋注で少なく(P=0.02),性別,年齢,15歳以下と同居,感染予防のタイプを調整したロジスティック回帰でも有意に筋注で少なかった(odds比0.73,P値=0.04).接種時痛や接種後副反応は看護学生320名(皮下注77,筋注243名)で調査し,接種時の痛みスコア(0痛くない~10非常に痛い)中央値は皮下注4,筋注2であり,筋注群で有意に痛みが少なく(P<0.001),注射への恐怖心等で調整した多重回帰でも筋注の方が1.26有意に少なかった.接種後の痛みや腫脹についても,筋注群の方が軽度であった.筋注は皮下注に比べて,インフルエンザ発症の報告数が少なく,接種時疼痛,接種後疼痛腫脹も少なかった.筋注は優れた投与方法と考えられ,本法の用法として認められることが望まれる.

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© 2021 一般社団法人 日本環境感染学会
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