2025 年 40 巻 1 号 p. 8-12
歯科・口腔外科領域においては,薬剤耐性対策アクションプランの認識の低さが報告されている.当院では,歯科・口腔外科が第3世代セファロスポリン系薬の使用量のほとんどを占めており,ペニシリン系の使用量が少なかった.そこで本研究では,歯科・口腔外科外来の抗菌薬適正使用の推進への薬剤師による介入が,ペニシリン系薬と第3世代セファロスポリン系薬の使用量に与える影響について評価した.アモキシシリン水和物(AMPC)とセフジトレンピボキシル(CDTR-PI)が処方された歯科・口腔外科の外来患者を対象に,2018年10月から2020年9月を介入前群,2020年10月から2022年9月を介入後群とし介入前後の抗菌薬使用密度(Antimicrobial Use Density:AUD)の平均値を比較した.介入前のAUDの平均値は,AMPCで22.2,CDTR-PIで139.3となった.介入後はAMPCで62.7,CDTR-PIで82.3となり,CDTR-PIに統計学的有意差を認めた(p<0.05).薬剤師が処方支援することで,AMPCのAUDの平均値の増加は有意差を認めなかったが,第3世代セファロスポリン系薬では有意に低下した.薬剤師の介入は,歯科医師の抗菌薬の処方に影響を与え,抗菌薬適正使用の推進に寄与することができると考える.