環境感染
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高度汚染した手指の衛生学的手洗いの検討
矢野 久子小林 寛伊奥住 捷子
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1995 年 10 巻 2 号 p. 44-47

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抄録

病院感染防止のために衛生学的手洗いは重要である. しかし, 病棟などでの手洗いの頻度, 手洗い時間の短さが指摘されている. 高度に手指汚染した場合の手洗い時間, 手洗い方法とその効果について検討した.
手洗いの訓練を受けていない対象者1名の手指 (片手) に, 7.0×108 CFU/mlStaphylococcus aureusまたはEscherichia coliを片手に100μlずつ付着・乾燥させた後に衛生学的手洗いを行った. 手洗いの時間は5-60秒であり, 手洗い方法は流水のみ, 石鹸と流水, 4w/v%手洗い用クロルヘキシジンと流水, 10w/v%ポビドンヨードと流水て, 片手ずつ手掌全体を培地に押しつけた. 各群の手洗いは5回ずつ行った. 培養後, 菌数算定を行い, Wilcoxonの符号順位検定を行った.
流水のみで5秒間手洗いをした場合の対数減数log10 reductionは, S. aureusが4.0, E. coliが3.2であった. 流水のみ. および石鹸と流水による30~60秒間の手洗いの場合では, 両付着菌とも十分には除去されなかった. 両消毒薬を使用して20秒間以上の手洗いを行うと, 付着菌はほぼ除去された. 両消毒薬を使用しての手洗いは, S. auyeusはどの手洗い時間でも, E. coliは10秒間以上の手洗いで, 流水のみあるいは石鹸と流水での手洗いと比較して有意 (p<0.05) に菌数が減少した.
以上より, 手洗いは行うことが第一に重要である. 高度の汚染の場合は, 消毒薬を使用して20秒間以上の手洗いを行う必要がある.

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