1999 年 14 巻 2 号 p. 142-147
臨床分離のMethicillin-Resistant Staphylococcus aureus (MRSA) に対するポビドンヨード (PVPI), グルコン酸クロルヘキシジン (CHG), 塩化ベンザルコニウム (BAC), 塩酸アルキルジアミノエチルグリシン (AEG) の殺菌効果について検討した. PVP-IおよびAEGは0.5~0.05%のいずれの濃度においても作用時間0.5分で残存菌は認めなくなり, 優れた殺菌効果を示したが, CHGでは0.5%濃度に3分間作用させてもかなりの残存菌が見られ, 完全に殺菌するために10分間以上を要した. またBACは0.05%では3分間の作用で, 0.2%では1分間の作用でほぼ全ての株において効果が認められた. なお今回供試したMRSAについて薬剤感受性等の性状について調べたところ, 我国での報告と良く一致する内容であった. ただしいずれの性状も消毒剤の殺菌効果との関連性は見られず, また対照としてMethicillin-Sensitive S.aureus (MSSA) に対する殺菌効果についても検討したが, MRSAと同様な結果を示した. さらに今回, 最も効果の見られたPVP-Iにおいて, 有機物存在下における殺菌効果について検討したところ, PVP-I濃度に依存して有機物の影響が認められたが, PVP-I0.5%ではヒト血清10%存在下でも105CFU/ml以上の菌数の減少を示し, 適正な使用濃度を設定することにより優れた効果を維持できることを確認した.