環境感染
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NICUにおけるMRSAキャリア化防止対策とムピロシン耐性化について
佐藤 延子阿部 裕子石井 恵子金光 敬二賀来 満夫佐山 恭子堺 武男
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キーワード: ムピロシン耐性
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2002 年 17 巻 3 号 p. 250-256

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抄録

NICUの入院患者におけるMRSAのキャリア化を防止する目的で経過を観察しながらムピロシン軟膏の外用によるコントロールを試みた. ムピロシン軟膏の外用は1日3回3日間連続投与を1クールとし, 1996年5月から9月を薬剤非投与の観察期間とした. ムピロシン軟膏を入院時と週1回の投与群 (1996年10月~12月), 入院時と月1回の投与群 (1997年1月~5月), 入院時と月2回の投与群 (1997年6月~10月), 対象を特定した入院時の投与群 (2000年1月~8月) およびポビドンヨード含有クリームの1日1回投与群 (1997年11月~1999年12月) についてMRSAの分離率, 保菌率, 感染率の比較検討を行った. コントロール群との比較でムピロシン軟膏投与群およびポビドンヨード含有クリーム投与群の間には保菌率の低下が認められ, 特に初期のムピロシン軟膏投与群では著明な効果が認められた. これらの経過中, ムピロシンに対する薬剤感受性検査を実施して耐性化の監視を行った. 1999年3月頃からMRSAがムピロシン耐性傾向となり1024μg/ml以上の高度耐性株も確認された. ムピロシンの外用はMRSAのキャリア化防止に有効ではあるが連用による耐性獲得が新たな問題として生じてくる. 定期的な細菌検査で予防効果を評価するとともに, ムピロシンに対する感受性の変化を監視することも併用して予防効果と耐性化防止の両面を考慮に入れて使用方法を検討していくことが重要である.

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© 日本環境感染学会
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