環境感染
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合成擬似セラミド含有速乾性擦式手指消毒薬の手荒れ抑制効果
坪井 良治新井 圭太郎住田 治子西尾 正也長谷部 恵子日置 祐一奥田 峰広
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2006 年 21 巻 2 号 p. 73-80

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抄録

近年, 手指衛生管理として, 速乾性擦式手指消毒薬の使用が推奨されている. しかし, 頻回使用では, 手荒れが誘発されるという問題があり, 湿潤剤を含有する速乾性擦式手指消毒薬の使用がより好ましい. そこで今回, 湿潤剤として合成擬似セラミドを含有した速乾性擦式手指消毒薬に, 手荒れ抑制効果があるかどうかを検討した.
塩化ベンザルコニウム0.2w/v%と日局エタノール83vol%を含有する速乾性擦式手指消毒薬に, 湿潤剤として合成擬似セラミドを含有するSP製剤 (11例), 湿潤剤として天然保湿因子, プロピレングリコールを含有する市販品のNF製剤 (10例), 湿潤剤を含まないPL製剤 (10例) の3種の製剤を, 医療従事者を対象として, 3週間の比較使用試験を行った. 使用前, 1週後, 2週後の皮膚の状態を, 皮膚科医による皮膚所見, 角層水分量, 経表皮水分蒸散量, 写真撮影, アンケート調査により検討した. その結果, SP製剤は, 11例中8例 (73%) の被験者に手荒れ抑制効果が認められたのに対し, NF製剤は手荒れ抑制効果はみられず, 一方, PL製剤は, 10例中6例 (60%) の被験者に皮膚状態の悪化が見られた. また, SP製剤, NF製剤ともにべたつきがなく, 使用感も良好で, 使用後の作業性にも, 特に問題は認められなかった.
湿潤剤含有速乾性擦式手指消毒薬は, 湿潤剤非含有製剤との比較において, 手荒れ抑制に有効であり, 中でも, 合成擬似セラミドを含有した速乾性手指消毒薬が, 特に手荒れ抑制効果が高く, 使用感が良好で, 作業性に問題はなく, 手指衛生管理上の使用に適していることが示唆された.

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