環境感染
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消化器外科病棟におけるMRSA感染の拡がり
草地 信也炭山 嘉伸宮崎 修一
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キーワード: 術後感染, 院内感染
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1989 年 4 巻 2 号 p. 39-44

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抄録
最近, 消化器手術後のMRSA感染症が急増していることから, 入院患者, 医療従事者, 患者周囲からMRSAを検索し, その感染経路を検討した. 当教室で1987年9月より1988年2月までに経験したMRSAによる術後感染症例は22例で, 初期には同菌による感染性腸炎がほとんどであった. このうち9例は同時期にリカバリー室で治療を受けており, これらの症例から分離されたMRSAはいずれもコアグラーゼII型, エンテロトキシンC型, TSST-1を産生し, ファージ型はNTであったことから院内感染が考えられた. そこで医師, 看護婦, 入院患者の鼻粘膜からMRSAを検索したところ, 7-33%の保菌者が認められた. しかし, これらから分離されたMRSAの性状は患者のそれとは必ずしも一致しなかった.そこで82例の手術症例の入院時, 手術前, 手術後に鼻粘膜からMRSAを検索したが, MRSAによる術後感染症は必ずしも保菌者から発症していなかった. そこで, リカバリー室からMRSAを検索したところ, MRSAによる術後肺炎患者の在室しているときには, 患者周囲のシーツ, カーテン, 空中からMRSAが検出され, 同室患者の鼻粘膜からも本菌が検出された. また, これらの菌の性状が一致したことから, 患者を介した院内感染の可能性が示唆された. そこでMRSA患者は隔離し, 医師・看護婦はマスク, 帽子, 手袋を着用し, 処置後の手洗いの励行とともに, 病室の滅菌に努めたところ, 術後MRSA感染症, 特にMRSAによる感染性腸炎は激減した.
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© 日本環境感染学会
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