抄録
1985年8月より1989年1月までの約3年半の期間に, 東大病院重症救急患者病室 (救急ICU) 床より検出されたStaphylococcus属572株のPCG, MCIPC, MPIPC, DMPPC, CEZ, PIPCに対する薬剤感受性をディスク法で検討した結果, グラム陰性桿菌でみられたと同様に, グルタールアルデヒドによる定期的消毒 (GA消毒) により, 供試薬剤に対して感受性の低下した菌株が除去される傾向がみられた.
対象菌株572株の内訳は, Staphylococcus epidermidis 123株, S. capitis72株, S. aureus46株, S.haemolyticus46株, S. warneri31株, S. cohnii29株, S. hominis27株, S. saprophyticus10株, S. xylosus7株, その他181株である.
各薬剤に対する感性菌株の出現頻度を検出時期別に比較すると, 各薬剤とも各時期でI期 (GA消毒後3ヵ月以内) に比し, II期 (GA消毒後4-6ヵ月) において, 感性菌株の出現頻度 (感性菌%) が減少しているが, 次のGA消毒により薬剤感受性の低下した菌株が除去されて, I期には感性菌%を回復した.特にMCIPCとMPIPCは全期間を通じてこの傾向がみられた.供試5薬剤中5剤および4剤に対してまったく感性を示さない菌株の出現頻度は, 多いものよりS. cohnii62%, S. saprophyticus60%, S. aureus43%, S. haemolyticus41%, S. capitis35%, S. hominis33%, S. epidermidis24%などである.