環境感染
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MRSAのOfloxacin耐性を用いた環境感染評価
小児科病棟と内科病棟の比較
坂本 春生金子 明寛草野 正一丹羽 伊知郎小松本 悟谷 源一川島 千恵子川田 和弘松本 豊美子唐木田 一成岩田 敏小林 寅哲
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1991 年 6 巻 2 号 p. 21-26

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抄録
本院で1986年に各種臨床材料から分離されたMRSA株は, ofloxacin (OFLX) の感受性はMIC90が0.39μg/mlであったが, 1989年株ではMIC90が50μg/mlと耐性化が進んでいた.この中で小児科病棟由来のMRSA株はOFLXに対して1989年株においてもMIC90が0.39μg/mlと良好な感受性を有していた.これは1986年から1989年の間に, ニューキノロン剤の適応のない小児科ではOFLXをまったく使用していないことに起因するものと思われた.そこでOFLXに対するMRSAの感受性を指標として, 小児科病棟と内科病棟の医療スタッフ鼻腔常在菌および各病棟内の環境分布菌について比較検討した.この結果は小児科病棟で検出されるMRSAは鼻腔株, 環境株ともOFLXに対して感受性であったが, 内科病棟で検出されるMRSRはすべて低感受性株であった.このことは内科病棟では, OFLXの投与により誘導されたOFLX耐性MRSAが臨床分離株のみならず, すでに環境株, 医療スタッフの鼻腔内保有菌として定着していることをあらわしている.本院の他科から検出されるMRSAはOFLXに対する耐性株が多いので, 菌の伝播についての結論は出ないが, このことは我々の予想以上に菌の耐性化と伝播には特定の薬剤の使用の影響が大きいことを示唆していた.OFLX耐性MRSAは主にニューキノロン剤の投与で誘導されており, MASAの院内感染を評価する指標として有効であった.
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© 日本環境感染学会
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