環境感染
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MRSAの疫学と院内感染および抗菌剤の併用効果
石代 欣一郎福地 邦彦高木 康五味 邦英小池 正
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1991 年 6 巻 2 号 p. 27-34

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抄録

昭和大学病院臨床検査部に提出された, 患者検体より検出されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の臨床細菌学的検索, および医療従事者による院内感染の動向, さらには単剤あるいは多剤併用時でのMRSAに対する薬剤感受性について比較検討を加えた.
1990年5月から12月までの8ヵ月間に臨床検査部細菌検査室に提出された検体総数27,458例中, 黄色ブドウ球菌が検出されたのは1,836例で, うち973例がMRSAであった.そして, 同一人物の重複を除く月別黄色ブドドウ球菌検出数は8月の120件をピークとし, その後は100件前後で横ばい状態であるが, 黄色ブドウ球菌検出数に占めるMRSAの比率は増加傾向であった.また科別MRSA検出率では新生児・未熟児センターを筆頭にICU・CCUがこれについだが, 医療従事者の科別検出状況では内科, 外科の医療従事者にMRSAが多く検出されており, 新生児・未熟児センター, ICU・CCUでのMRSA感染については院内感染の可能性は否定的であった.
今回検出されたMRSAの型別分析では, コアグラーゼはII型が85%で大半を占め, 毒素型はC型が58%で最多であった.またMSSAには単剤でも感受性である抗菌剤も, MRSAではほとんど耐性となってきているものが多かったが, ABKだけはMICが群を抜いて小さく十分な抗菌作用が期待できた.また2剤併用例ではCZON+IPMが高い相乗効果を示し, 単独使用と比較するとそのMICは約1/10に減少していた.

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