環境感染
Online ISSN : 1884-2429
Print ISSN : 0918-3337
ISSN-L : 0918-3337
薬剤部で扱われる病棟からの搬送物の細菌汚染と消毒液噴霧の除菌効果
山添 喜久雄岩井 紀代身水上 勇三片桐 義博加藤 直樹渡辺 邦友上野 一恵
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 7 巻 2 号 p. 21-26

詳細
抄録

病院内の各種搬送物の細菌汚染は, 搬送途上における院内の他の部署への汚染の拡大や末端医療従事者への二次汚染, 二次感染を引き起こすことが懸念される. 薬剤部への病棟からの搬送物に関しても同様のことが考えられることから, これらに付着する菌種や除菌方法について検討した. 病棟から回収した注射薬補給ワゴン車および製剤容器とその運搬車の表面を拭き取り, 細菌の検出と同定を行った結果, Pseudomonas属は検出されなかったが, 製剤容器とその運搬車では, 単位面積あたり比較的多数のStaphylococcus属が認められた.検討した37本の製剤容器表面では34本 (92%) でStaphylococcus属を検出し, 35分離株中Staphylococcus aureusが9株 (26%) ともっとも多く, ついでStaphylococcus haemolyticusが7株 (20%) であった. 今回, 製剤容器から検出した42菌株の薬剤感受性試験ではS. aureusの78%に, またS. aureus以外のStaphylococcus属の9%にβ-ラクタム系抗菌薬に対する多剤耐性株が認められた. ATCC由来株を含めたS. aureus6株を用いて菌液をガラス板に塗布後, 各種消毒液 (0.1%グルコン酸クロルヘキシジン, 0.025%塩化ベンザルコニウム, 消毒用アルコール, 0.5%グルコン酸クロルヘキシジンアルコール) を噴霧したところ良好な除菌効果が認められ, これらの消毒液の噴霧は機材表面の汚染に対して有用な除菌方法であると考えられた.

著者関連情報
© 日本環境感染学会
前の記事 次の記事
feedback
Top