環境感染
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院内感染を考えるための小児科スタッフのウイルス血清学的調査
長 秀男武内 可尚青山 辰夫安倍 隆山下 行雄野田 美恵子
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1994 年 9 巻 2 号 p. 35-39

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抄録

院内感染の観点から, 小児科スタッフの急性感染症罹患状況を把握する目的で, 医師および看護婦の呼吸器系ウイルスに対する血清反応の変動を6ヵ月間継続的に観察した.
平成3年10月から4年3月にかけて, 月1回小児科スタッフ34例から採血し, 141検体についてインフルエンザウイルスA, B, アデノウイルス, RSウイルスに対するCF抗体価およびパラインフルエンザウイルス1, 2, 3に対するHI抗体価を測定した.
冬期6ヵ月の間に, 小児科スタッフ34例中16例に1回ないしそれ以上の有意の抗体価の上昇を認めた.その内訳はA型インフルエンザ9例, アデノウイルス11例, RSウイルス4例, パラインフルエンザウイルス1型5例, 3型1例で, 残りの2種に対する抗体価の上昇例はなかった.
A型インフルエンザに対する抗体上昇例数は, 当科患児からのウイルス分離数と一致した経時的推移を示した.当科患児からのRSウイルス抗原検出は例年通り12月にそのピークに達したが, 小児科スタッフの抗体上昇例は11月と3月に2例ずつ認めたにすぎなかった.アデノウイルスに対する抗体価上昇例は11月と1月にピークがあり, 1月には患児からスタッフへの感染を示す事例を認めた.これらウイルスの月別抗体上昇例数の経時的推移は院内感染の一因としてスタッフと患児の間の様々な関わり合いを示す所見と考えられる.

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© 日本環境感染学会
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