抄録
統合失調症では発症前の段階で脳内の非可逆的変化が進行している可能性が指摘されている。前駆期でこの変化を止めることが統合失調症の治療の新ステージとなる。一方、発症予防治療薬の開発競争が進んでいる疾患にアルツハイマー病がある。統合失調症の早期介入戦略はアルツハイマー病から何を学べるのか考えてみる。
アルツハイマー病ではアミロイド仮説という有力な病態モデルがある。それによると発症の10-20年前からアミロイド沈着が始まり、やがて神経細胞死という非可逆的変化に進む。一方、統合失調症では異常物質を除去するというコンセプトでの予防はありえない。統合失調症では包括的で確定的な病因・病態仮説がないものの、NMDA/GABA障害仮説は予防戦略のよい展望を与えてくれる。この仮説に関連するバイオマーカーの確立は、サブグループを特定(患者層別マーカー)でき、介入効果の指標(代用マーカー)となる可能性がある。バイオマーカーの確立は早期介入の科学性の確立と社会からの信頼の獲得のために必要である。