抄録
精神障害の予防、とくに再発予防については、日常臨床の中で常に考えられていたであろう。しかし一次予防については、わが国では「大学紛争」などの影響もあって一次予防の研究自体がハイリスクとの考えがあった。したがって「精神障害の予防」が学会等で議論されることはなかった。
第16回日本社会精神医学会学術集会(1996)において、シンポジウム「統合失調症の予防の可能性」が実施され、心配された混乱もなく終了した。最終日の夕方、日本精神障害予防研究会が発足した。筆者が代表世話人となった。第12回研究会から日本精神保健・予防学会として発展的に改組され、水野雅文教授(東邦大学)が理事長に就任し、活動は活発化し会員数も増え現在に至っている。2017年から理事長は鈴木道雄教授(富山大学)に交代となった。
この間、わが国で第1回日本国際精神障害予防学会(2001)、第9回国際早期精神病学会(2014)が開催されたが、本学会が中心的な役割を果たした。いずれの学会も成功した。
精神障害の予防を考えるさい、一次から三次まで含めて重要なことは、脆弱要因の軽減とレジリエンス(回復力)の増強であろう。そこで現在まで報告されている脆弱要因とレジリエンスを取り上げて紹介した。最後に今後の課題について述べた。