予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
ARMS CBTにおける治療のポイント
西山 志満子
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2018 年 3 巻 1 号 p. 20-30

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抄録

思春期は第二次性徴の発現により心身ともに大きく変化する時期に相当する。自己像が確立し、自立心が芽生え、大人に反抗的となる一方で、他者からの評価に敏感で傷つきやすく、不安定な精神状態に陥りやすい。この思春期を含む時期は精神疾患の好発期にあたり、精神病発症危険状態(At Risk Mental State:ARMS)の出現時期は10代から20代の若者に多い。そのため、ARMSの病態を理解するには、精神症状ばかりでなく、発達段階の特徴を把握し、クライエントが抱える問題の全体像をみることが有効である。また認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)へのモチベーションを維持し自立心を育むために、進路を検討する際には可能な限り本人の希望を尊重することが切要である。 ARMSの若者が抱えている悩みは多岐にわたる。孤独や孤立感は共通していても、被害関係念慮や被注察感から人を遠ざける、あるいは引っ越しや職場の配置転換などの環境変化により周囲の人と馴染めずにいるなど、その背景要因はさまざまである。従って、クライエントの体験をCBTの理論の枠組みに無理矢理はめ込もうとするのではなく、理論と個別性の両側面から理解していく必要がある。 さらに、ARMSの若者はストレスに脆弱で、微弱な精神病症状などから不登校となる、あるいは休学・退学する、職場環境や人間関係に馴染めず、休職・退職する者が少なくない。彼らのリカバリーを支援するために、病院と当事者の関係だけではなく、家族、担任、養護教諭、あるいは職場の上司などとの連携が重要である。

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© 2018 日本精神保健・予防学会
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