抄録
近年サイコーシスや統合失調症の治療においてもリカバリーという概念が浸透してきており、精神科医療や精神保健福祉において期待される介入や支援の質も、ただ単に症状を緩和しそれを維持するという多くの人にとって共通する目的から、苦痛を感じている患者がより充実した生活を送れるための工夫というような個別性の高い内容へとシフトしてきている。そこでは、援助者が疾患病理の理解だけでなく、その人の全人的な理解を土台としつつ、患者主体に意思決定していくプロセスが重視されることになる。
認知行動療法は開発当初から協働的経験主義をその基本的な関わり方として重視しており、その他の概念もリカバリーの概念と親和性が高いとされている。リカバリーの過程には多種多様な人と資源が関係する場合が多いため、患者を中心に据えた対話を重視すること、言い方を変えれば、患者の心の状況を中心に据えて支援や治療を整えていくことは、多くの患者が精神障害に関連した苦痛にさいなまれながら生活を送っていることを加味すれば、効率的かつ欠かせない要素であるといえる。認知行動療法はそうした要素を促進する実践として、エビデンスに基づく、医療領域で提供しやすい手法であり、患者のリカバリーを円滑に進めていくことを可能にする介入であることは想像に難くない。特にサイコーシスや統合失調症という疾患は国内では精神科病院が関与することが多いため、サイコーシスに対する認知行動療法(以下Cognitive Behavioral Therapy for Psychosis略してCBTpとする)による心理社会的な介入は実臨床のニーズに沿った介入となることが期待される。
本稿ではCBTpの治療過程を筆者が経験した症例を提示しながら、リカバリーを目指したチーム医療との連携のあり方やCBTpを導入することによるメリットについて検討したい。前半でまずは理論的な背景について簡単にまとめ、その後症例の紹介をした後に、チーム医療に与えた変化について検討していきたい。尚、症例に関しては、個人が特定できるような情報は適宜改変して提示している。