予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
アジア精神病MRI研究コンソーシアム
小池 進介森田 健太郎植松 明子北島 和俊平野 羊嗣笹林 大樹高橋 努高柳 陽一郎佐久間 篤岡田 直大吉野 伸哉上野 雄己松本 和紀鬼塚 俊明鈴木 道雄笠井 清登
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2019 年 4 巻 1 号 p. 2-15

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抄録
これまでのMRI多施設共同メガスタディでは、精神疾患に関する脳病態について一般化可能性のある結果が得られるようになってきた。しかしながら、これらの共同研究のほとんどは欧米諸国から発信されたものである。アジア精神病MRI研究コンソーシアム (ACMP, http://asia-mri-consortium.net/) は2018年に立ち上がったMRI共同研究プロジェクトであり、当初は精神病ハイリスク群や初回エピソード精神病を対象とした国内外の多施設共同研究から拡張されたものである。現在では統合失調症全般に対象を拡大し準備を進めている。2019年現在、日本、韓国、中国および台湾の4つの国と地域から14施設が参加を表明している。アジア諸国で多施設共同MRI研究を行う意義として、 (1) ほぼすべての被験者がアジア人種であり生物学的な類似点が多く、脳病態をとらえやすい可能性がある、 (2) 特に欧州と比較してサンプルサイズを得やすい、 (3) 違法薬物の影響がほとんどない、(4) 医療環境、社会学的背景が近く、被験者リクルート、計測環境、臨床アウトカム取得などのノウハウが共有しやすい、 (5) 精神科医が臨床研究を並行して行っていることが多く、臨床に資する仮説が立てやすく情報を共有しやすい、などがあげられる。予備的な集計では、初回エピソード精神病700名および健常対象者1,000名のT1強調画像が解析可能であると考えられる。こうした大規模データに対応して、(1) データ共有データベースと前処理パイプラインの構築、 (2) プロジェクトおよび倫理的配慮に関する管理体制、 (3) 研究者間のコミュニケーションと共同研究体制の推進について準備を進めてきた。ACMPは精神疾患の脳画像研究領域ではアジア初の国際多施設共同研究であり、統合失調症の病態や発症に関わる生物学的基盤を新たに見出し、臨床応用可能なバイオマーカー候補を発見することが期待される。
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© 2019 日本精神保健・予防学会
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