予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
今後の臨床・研究における早期精神病の絞り込み戦略のあり方
鈴木 道雄西山 志満子樋口 悠子高橋 努
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2019 年 4 巻 1 号 p. 61-66

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抄録

At-risk mental state(ARMS)は、臨床的特徴から精神病発症のリスクが高いと考えられる状態として概念化された。当初の早期精神病研究は、ARMS概念により精神病発症リスクの絞り込み(closing-in)を行い、統合失調症のindicated prevention(徴候に基づく予防)の達成を目的としていた。ARMSの診断にultra-high risk(UHR)基準を用いた場合、ARMSから精神病状態に移行する割合(移行率)はせいぜい30数%であることが明らかになった。また、ARMSの転帰は多様で、非精神病性障害の罹患や併存が高率に認められ、精神病の発症・非発症に関わらず不良な機能的転帰を示すことが少なくない。早期介入の臨床においては、統合失調症など特定の転帰にこだわらずに、若者の精神的健康と生活を個別的に支援しながら、精神症状の悪化・進行を防ぐことに主眼が置かれるようになっている。一方で、研究においては、初期の非特異的な精神症状がより特異的なものに分化していく過程を理解することが重要であり、統合失調症を含む精神病発症リスクの絞り込みもその一部として検討されることになろう。生物学的指標の開発のために、多施設共同研究の推進が重要と考えられる。

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© 2019 日本精神保健・予防学会
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