抄録
新型コロナウイルス感染症は、「新しい生活様式」をはじめとする感染予防のための日常生活ならびに家族関係の変化や経済的困窮など、さまざまな変化をもたらした。新型コロナウイルス感染症自体の精神的影響のみならず、随伴する日常生活変化などの影響もあい相まって、若年者には、うつ症状やストレス症状、自傷行為などがあらわれている。かつ、2020年の小中高生の自殺者数は、前年から25%増加した499人で、統計の残る1980年以降では最多となった。これらに対する支援としては、新型コロナウイルス感染症に関する正確な知識の周知を前提とした上で、本人や保護者らに対する心理教育や一般向けの普及啓発、支援者の人材育成、関係機関の連携、アクセスしやすい相談体制、生きることの促進要因を増やすことが挙げられる。今後は、ポストコロナをも視野に入れながら、自殺予防を含む若年者のメンタルヘルスの向上に、一人一人が立場を活かして努めることが求められる。