予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
コロナ禍における摂食障害への早期介入および長期化例が経験する変化の治療的意義
西園マーハ 文
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2021 年 6 巻 1 号 p. 26-34

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抄録
【目的】 コロナ禍が、摂食障害の発症や受診状況にどのように影響しているか考察する。また、既に発症し て長期化した事例では、コロナ禍による生活の変化がどのように症状に影響しているかを知る。 【対象と方法】 日本摂食障害協会で、2020 年4 月15 日から同5 月7 日の外出自粛期と同8 月25 日から9 月11 日の自 粛解除期の2 回、当事者対象の調査を実施し、それぞれ278 名、193名の結果を解析した。また、日本摂 食障害協会アンケートの自由記述や臨床事例からの考察を行った。 【結果】 神経性やせ症、神経性過食症のどちらの病型でも、コロナ禍では、外出自粛期、自粛解除期のいずれ の時期においても症状が悪化する傾向が見られた。食行動だけでなく、その背景の精神症状の悪化も 見られた。しかし、中にはコロナ禍による生活変化が症状の改善をもたらした事例も見られた。休校 期には思春期の神経性やせ症の新たな発症も見られたが、比較的早期に受診する事例も見られた。 【結論】 摂食障害は、初発時の受診抵抗の強さや、長期化例における症状改善の難しさが知られているが、コ ロナ禍の生活の変化は、発症形式や受診行動、症状の在り方にも様々な変化を起こしている。今後は 平常時との比較を行い、早期の対応に生かしていくことが重要である。
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© 2021 日本精神保健・予防学会
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