抄録
画像診断の普及により,腎細胞癌の多くはT1病期で発見される.東北大学と関連施設では数年前から前向きの腎癌登録を行っている.それによると一般病院泌尿器科で扱っている腎癌の約80%はT1である.一方,腎癌に対する腎摘術後のCKDの問題が大きく取り上げられるようになってきた.CKD患者では心血管系などによる死亡率が有意に増加するという.せっかく早期で発見されても治療選択において腎機能への十分な配慮がなければ,我々の医療行為が患者の寿命をむしろ縮めるということすら危惧されるのである.近年,nephron-sparing手術が注目されるゆえんである.
そこで,本特集では腎部分切除術の長期成績を取り上げた.腎部分切除術は腫瘍学的に問題ないのか,またどこまで可能なのか.長期腎機能はどうか,またCKDの予測因子は何か.低侵襲手術として普及しつつある腹腔鏡下腎部分切除術の到達点と課題は何か.重要なエンドポイントである腎機能温存を最大限達成するために何が必要か.このように課題は多い.本特集が腎部分切除術の一つの到達点を明らかにするとともに,新たな展開への一助となれば幸いである.