Japanese Journal of Endourology
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特集1:RARC ICUDを行う際のpit fall
  • 古家 琢也
    2021 年 34 巻 2 号 p. 177
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     2012年にロボット支援前立腺全摘除術が保険収載となって以降, 多くの泌尿器科医がロボット手術に携わってきたと思われる. そのため, 我々泌尿器科医は, ロボットの操作に精通しているものと考えられてきた. 2018年以降, 様々な泌尿器科疾患に対しロボット手術が行えるようになったことから, これまで以上にロボット手術を行う機会が明らかに増加し, また若い先生方が執刀する症例もますます増えているものと思われる. しかしロボット支援膀胱全摘除術 (RARC) に関しては, これまでの我々の考えを見直さざるを得ないことが明らかとなってきたように思う.

     RARC時の膀胱の取り扱い方はもちろんのこと, それに続いて行う必要のある尿路変向術に関しても, ロボットで行うことに対する是非が, 未だに問われていると実感している. 海外の報告では, 多くの施設がロボットを使って体腔内で尿路変向を行う, いわゆるICUDが主流となっているが1), 本邦では一施設で行う症例数が限られていることから (症例数の多い施設でも年間30例程度であるため), 海外のhigh-volume hospitalを模倣しようとしても, 困難であることは明らかである. また, 尿路変向に用いる腸管は, ロボットで扱うにはかなり脆弱な臓器であるため, 腸管損傷はもとより, ともすれば予期せぬ合併症に遭遇する危険性をはらんでいる2). そのため, 使用する鉗子や術野の展開, 腸管のダメージを如何に最小限にするにはどのような工夫が必要なのかなど, ICUDを本邦で普及させるためには多くの課題が山積している.

     本稿では4名のエキスパートに, ICUDを導入する際のpit fallに関して述べていただいた. 症例数の少ない施設においても, どうすればスムースにICUDを導入出来得るのか, 自験例を紹介いただきながら, 術式毎に詳細に解説いただいた. これから導入を考えている施設はもとより, 現在行っている先生方にとっても, 明日からの診療の一助となれば幸いである.

  • 槙山 和秀
    2021 年 34 巻 2 号 p. 178-181
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     消化管や尿管は愛護的に扱うべきである. ロボット手術では鉗子の力が強いので, 愛護的にこれらを扱うためには工夫が必要である. ロボット鉗子は把持力の弱いものを選択するべきであるし, 可能であれば消化管を把持しないでICUDを行うことが望ましい. さらに, 長く可動性のある回腸を操作しやすい場所に上手に固定し, シンプルにわかりやすく手術するのがポイントである. 具体的には使用する回腸に運針し, 糸をエクストラアームで把持し骨盤奥の高い位置に置くと回腸は吊り下げられたような状態になり扱いやすく, 使用しない回腸も邪魔にならない. 消化管や尿管に対するダメージを最小限にできれば, ICUDは低侵襲手術になると考えられる.

  • 小林 泰之, 枝村 康平, 岩田 健宏, 西村 慎吾, 和田 耕一郎, 荒木 元朗, 渡辺 豊彦, 那須 保友
    2021 年 34 巻 2 号 p. 182-185
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     岡山大学病院にて2018年1月より2020年9月までの期間に単一術者にて連続的に行われたロボット支援膀胱全摘 (以下 : RARC) 46症例体腔外尿路変更 (以下 : ECUD) (23例), 体腔内尿路変更 (以下 : ICUD) (23例) の比較検討を行った. 検討項目は手術時間, 推定出血量, 輸血率, リンパ節郭清個数, 入院日数, 血液生化学データ, 術後合併症とした. 尿路変更に要した時間はICUD群の方が有意に長かったが, 入院期間はICUD群が有意に短かった. 他の周術期成績はECUDと同等であった. 術者の視点では良好な拡大視野, 尿管導管吻合の精緻性, 同一視野で手術の流れが途切れることなく継続できることがICUDのメリットではないかと考える.

  • 澤田 篤郎, 後藤 崇之
    2021 年 34 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     2018年4月にロボット支援下根治的膀胱全摘除術 (RARC) が保険収載されて以後, 当院ではRARC及び体腔内尿路変向術 (ICUD) による回腸導管造設術を開始し, 現在までに20例以上施行してきた. 当院ではRARCのポート位置に恥骨上12 mmの助手用ポートを追加してICUDによる回腸導管造設術を行っている. RARC後のICUDを行うにあたって当院で重視していることが2点ある. 一点は執刀医と助手のチームワーク, もう一点は腸管損傷のリスク低減である.

     RARC ICUDでは術者と二人の助手のチームワークが非常に重要である. 導管の遊離にせよ, 尿管導管吻合にせよ, 術者と助手が次に行う操作・注意点等の意識を共有しなければ, 安全かつ効率的にICUDを行うことはできない. 我々はICUDパートの手術工程表を作成し, これを用いることでチームでの知識の共有とレベル向上を目指している. また腸管損傷のリスク低減も極めて重要である. ロボットアームは非常に強い力を発生するため, 腸管を手繰り寄せる操作などで注意を怠ると容易に腸管損傷が起こる. カディエールなど把持力が比較的弱いインストゥルメントがよく用いられているが, カディエールだから安全というわけではない. 把持力の違いを過信せず, こまめに支持糸をかけて腸管等を直接把持しないよう注意している. RARC後のICUD特有の問題点をうまくクリアすれば, 導入初期から安定した周術期成績で手術を行うことができると考えている.

  • 中根 慶太, 加藤 大貴, 髙井 学, 飯沼 光司, 堀江 憲吾, 古家 琢也
    2021 年 34 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     体腔内尿路変向 (ICUD : Intracorporeal Urinary Diversion) では, 術式をシンプルにし, 手技を定型化することが肝要である. 我々は, U字新膀胱を採用している. シンプルとはいえ, 工程数は多い. 定型的に手技を完結することが理想であるが, 実際にはそれぞれの工程において何らかの障害に直面することも多く, 臨機応変を要求される. 具体的には, 腸管壁損傷, 消化管再建のための腸管配置に難渋する, 新膀胱-尿道吻合が難しい, 尿管新膀胱吻合口を作成しにくい, 新膀胱壁縫合がやりにくい, 後腹膜化のための腹膜が残存していない, 等である. 各問題に対して当科での対処法を解説する.

特集2:RAPN困難症例への注意点
  • 江藤 正俊, 近藤 恒徳
    2021 年 34 巻 2 号 p. 196
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術 (RAPN) は2016年に保険収載されて以降, 多くの施設で施行されるようになった. 経験症例数の増加に伴い, これまでは開腹腎部分切除あるいは腹腔鏡下腎摘除を選択していた, いわゆる困難症例に対しても, RAPNの適応が拡大されようになっている. しかし一般的に腎部分切除は尿漏や仮性動脈瘤などの特有の合併症も含め, 合併症率が高い事も指摘されている. したがっていかに合併症を防ぐのかを知っておくことはたいへん重要である. また癌手術であるため確実な切除が必要である一方, 腎機能も可能なかぎり温存することが求められる. いわゆるtrifectaを意識しながら手術を行う事が必要となってくる. こうした術前準備や手術時の技術的なtipsについては論文から知ることは難しく, 学会のシンポジウムなどでエキスパートの発表を聞き実際の生の意見を吸収することが最も実践的な方法である.

     2020年の日本泌尿器内視鏡学会では, 本邦を代表するエキスパートに腎部分切除困難症例に対するRAPNにおける注意点を解説していただくシンポジウムが企画された. 明確な基準はないが, 一般的には4 cmを越えるT1b腫瘍, 埋没型腫瘍, 腎門部腫瘍があげられる. こうした要素を総合的に取り入れたRENAL nephrometryやPADUA systemなども現在かなり受け入れられている. それぞれのポイントについて各先生方に解説をしていただいた. まずT1b腫瘍に対する注意点を槙山和秀先生に, 完全埋没型腫瘍については高木敏男先生に, 腎門部腫瘍については日向信之先生に, RENAL high complexityについては川喜田睦司先生に御願いした. 本総説では各先生には手術を行う上で注意している技術的なポイントについて具体的に解説をいただいた. 図や写真を用いて説明をいただいており, たいへん実践的な手術手技解説書になっており, 先生方の今後のRAPNの適応拡大において有用であることはわれわれが保証する. 是非とも何回も読み直し, 安全かつ確実な技術習得につなげていただければ幸いである.

  • 槙山 和秀
    2021 年 34 巻 2 号 p. 197-200
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     本邦ではロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術 (RAPN) の保険適応はT1腎癌である. T1b腎癌に対するRAPNはT1aに対するRAPNより難易度は高いが, 今後本邦でも施行例の増加が予想される. 手術方法の基本はT1aと同じであるが, T1bでは阻血時間の延長が予想される. 注意点としては, 腎周囲脂肪剥離の際, 腫瘍損傷を避けること, 腫瘍切除は良好な視野で行い, 腎臓内部構造を正確に同定しながら切除を進めること, 太い動脈断端は確実に処理すること, 闇雲に深く運針しないことが挙げられる. T1b腫瘍は全体形状をイメージしながらの切除が可能であることが多いが, 腫瘍と正常腎臓の接着面積が広く, 切除および縫合に時間がかかるので, 切除縫合方法を標準化し, 効率よく阻血時間の延長を防止することが大切である.

  • 高木 敏男
    2021 年 34 巻 2 号 p. 201-204
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     完全埋没型腫瘍は腎表面から腫瘍が同定できないことから切除の際, 非常にストレスがかかる. 完全埋没型腫瘍を切除するにあたり, 以下の点に注意している.

    ①術前に体表超音波で腫瘍が同定できるか確認する.

    ②術前3DCTにて切除シミュレーションを行う.

    ③体腔内超音波にて切除予定ラインをマーキングする際, 腫瘍辺縁よりやや大きめに切除ラインを設定する.

    ④切除の際は逆円錐状に切除を進める. 徐々に腫瘍に近づいていくイメージである.

    ⑤腎表面の正常腎実質を把持牽引し, 腫瘍切除面を明らかにする. 切除部位に緊張をかけることで, 静脈性出血を抑えることができる.

    ⑥鈍的, 鋭的切除をしながら, 血管は丁寧に止血する.

    ⑦腫瘍底部では腫瘍被膜に沿って剥離を行い, collecting systemの損傷に気をつける. 切除断端陽性になり易い部位であることを意識した切除を行う.

    ⑧腎洞や腎杯が解放した場合は, 選択的に縫合閉鎖する (inner suture). 不必要に深く縫合すると, 動脈性出血をマスクしてしまうことが有り, 注意が必要.

    ⑨腎動脈を解放して, 動脈性出血の無いことを確認する.

     また, 助手の吸引・視野確保の為の牽引が非常に助けになる. 周到な手術準備, 良好な視野の確保, 丁寧な腫瘍切除, 十分な止血確認を行うことで, 断端陰性を担保しながら, 合併症無く, 良好な腎機能温存を達成することができる.

  • 日向 信之, 藤澤 正人
    2021 年 34 巻 2 号 p. 205-210
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     ロボット支援技術が腎部分切除術に応用されて以降, 腹腔鏡下手術に認められた技術的な困難をロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術 (RAPN) が乗り越えうる可能性が指摘されている. しかしながら腎門部腫瘍, 完全埋没型腫瘍, 大径腫瘍などの高難度腫瘍に対してはRAPNは未だ普及段階にあり根治的腎摘除術が適応されることも多い. 高難度腫瘍のうち腎門部腫瘍は主要な腎血管に近接するため術中術後の出血リスクが高く, また腫瘍が尿路に近接しやすく, 切除後に皮質縫合を行うための腎実質を欠くことから, 術後の尿溢流や仮性動脈瘤の発生リスクも高い. 腎門部腫瘍に対するRAPNの有用性は理論的には期待できるものの, そのことを示すエビデンスは殆どなく, 本邦では腎門部腫瘍に対するRAPNの有効性を評価するために阻血時間と断端陽性の有無を主要評価項目とし, LPNのヒストリカルコントロールと比較する多施設共同臨床試験が実施された. 主要評価項目の結果は, 温阻血時間の平均値は20.2分, 断端陽性率は1.9%と事前に設定した有効性判断基準を大幅に上回り, 腎門部腫瘍に対するRAPNの有効性が示された. 今後も不要な腎摘除術により患者が低侵襲な腎温存手術を受ける機会を喪失しないよう高難度腫瘍に対するエビデンスの確立が求められる.

  • 川喜田 睦司
    2021 年 34 巻 2 号 p. 211-215
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     腎実質は放射状構造を持ち, 腫瘍被膜に近接して鈍的に剥離できる最適な層が存在する. 放射状に腎実質を剥離すれば, 大きな血管を損傷することが少なく出血量の減少につながる. 腫瘍のマージンをできるだけ薄くして鈍的剥離を多用して腫瘍を核出する. 腎洞が開けば, 連続縫合で閉じるが, 腎切離面はソフト凝固で止血して実質縫合はしない.

     RENAL highはlow/moderateに比べ阻血時間が長い. なかでもN因子が阻血時間延長に最も関与している. さらに腎洞内に突出している症例は難易度が高く, ときにこぶ状の形状を持つものがあり, CTや術中に腎洞内にこぶ状の突出がある場合には慎重な剥離が求められる.

特集3:これから始めるロボット支援下仙骨膣固定術
  • 雑賀 隆史, 佐々木 ひと美
    2021 年 34 巻 2 号 p. 216
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     2005年にFDAがda Vinciサージカルシステムの婦人科手術への使用を承認以降, 婦人科手術におけるロボット手術の割合は増加しており, 2016年には米国において年間10%の割合で婦人科領域でのロボット手術数が増加していることが報告されている.

     骨盤臓器脱に対する仙骨膣固定術は1957年に報告され, 1991年からは腹腔鏡下仙骨膣固定術 (Laparoscopic sacrocolpopexy以下LSC) が開始された. 開腹術と比較し骨盤腔など狭く奥深い術野での操作が必要となる仙骨膣固定術では, 腹腔鏡手術のメリットが高く, 開腹術と比較し合併症なども少ないことが報告され, 低侵襲かつ様々な骨盤臓器脱に対応できるというメリットから, 骨盤臓器脱治療のゴールドスタンダードとされている. しかし狭い骨盤腔内での鉗子を用いた複数回の縫合など高い技術が要求される術式であることは否めない. 2020年4月, 骨盤臓器脱に対するロボット支援下仙骨膣固定術 (Robot assisted sacrocolpopexy以下RASC) が保険収載された. LSCでの治療経験がありロボットシステムを保有する施設での導入は当然のことながら, ロボット手術のメリットである立体画像やズーム機能, 広い関節可動域を持つ鉗子の操作性の良さ, デュアルコンソールによる指導などLSCの経験が少ない施設でもRSC導入のハードルを下げることが可能であり, 女性泌尿器科疾患に特化した施設以外でも今後ロボット手術件数が増加することが予測される.

     そこで本特集ではこれからRASCを始める術者・施設に向けて各施設の取り組みを披露し, 本邦におけるRASCの効率的で安全な術式の確立を目的として企画した. 施設や術者基準などRASC新規導入から各施設の標準術式や工夫, 術者としての必要な経験に加え, 女性泌尿器科疾患治療に対する根本的な考え方など, 様々な視点から骨盤臓器脱に対するRASCの有用性について述べられている. これからRASCを始めようとする術者の先生方に是非参考にしていただき, 多くの女性泌尿器科患者を救っていただきたい.

  • 福本 哲也, 曽我部 裕文, 新井 明那, 前田 晃宏, 渡辺 隆太, 野田 輝乙, 西村 謙一, 三浦 徳宣, 宮内 勇貴, 菊川 忠彦, ...
    2021 年 34 巻 2 号 p. 217-220
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下仙骨膣固定術は, 経腹的な外科的治療法として本邦で標準術式となっている. 当院では, 腹腔鏡下仙骨膣固定術100例を経験したのち, 2019年2月よりロボット支援仙骨膣固定術を導入し, 21例を経験した. 導入初期よりロボット支援手術の特色を生かした術式への改善を試みており, 特にExtra armを有効利用することで, 助手の負担軽減と経腟操作を省略することができた. 当院におけるロボット支援仙骨膣固定術について, 従来法からの工夫を含め報告する.

  • 佐古 智子, 岩田 健宏, 西村 慎吾, 高本 篤, 和田 耕一郎, 枝村 康平, 小林 泰之, 荒木 元朗, 石井 亜矢乃, 渡邉 豊彦, ...
    2021 年 34 巻 2 号 p. 221-225
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     骨盤臓器脱に対する治療として, 2010年に経腟メッシュ手術が, 2014年に腹腔鏡下仙骨膣固定術が保険収載され, 泌尿器科医が骨盤臓器脱に対する治療を行うことも一般的になってきている.

     2020年4月の診療報酬改定により, 新たにロボット支援腹腔鏡下仙骨膣固定術が保険収載された. 腹腔鏡下仙骨膣固定術は, 正確な剥離操作を要し, 深部での縫合結紮操作を多用する手術であることなど, 良性疾患に対する手術でありながら手技の難易度が比較的高い術式であると考えられる. これに対して手術支援ロボットを用いることで, 手術の難易度が低減されること, 手術成績が向上することが期待される.

     当院でも2020年8月よりロボット支援下仙骨膣固定術を導入した. ロボット支援下仙骨膣固定術のメリットやデメリット, 導入の意義などについて, 手術導入に向けた取り組みについて述べる.

  • 渡邊 昌太郎, 小杉 道男
    2021 年 34 巻 2 号 p. 226-230
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

      In Japan, robot-assisted laparoscopic sacrocolpopexy (RSC) has been covered by medical insurance since April 2020. Not only in Europe and the United States, but also in Asian countries, the technical and clinical evidence of RSC has been accumulating. RSC can be easily performed with sutures and ligatures even in the deep pelvic floor. Because of plenty suturing procedure in laparoscopic sacrocolpopexy (LSC), the learning curve of RSC is shorter than that of LSC. As robot-assisted surgery becomes more popular and experienced, RSC is expected to make the surgical treatment of pelvic organ prolapse (POP) more accessible.

      On the other hand, the broad knowledge and experience of female urologist will strengthen the quality of the surgery. Both robotic surgical skills and LSC experience must be important to RSC and bringing benefits for POP patients.

  • 竹中 政史, 佐々木 ひと美, 全並 賢二, 深谷 孝介, 市野 学, 高原 健, 住友 誠, 白木 良一
    2021 年 34 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     高齢化社会に伴い骨盤臓器脱 (pelvic organ prolapse : POP) は増加傾向にある. POP治療の目標は正常な泌尿生殖機能を保持しながら骨盤底を解剖学的及び生理的に修復する事である. 現在, 仙骨膣固定術はPOP治療のゴールドスタンダードであり, 2020年4月にロボット支援下仙骨膣固定術 (Robot Assisted Sacrocolpopexy : RASC) が保険収載された. 当院では保険収載に先駆け2013年から施設倫理委員会の承認を得てRASCを導入し自費診療で初期5例を経験した. 2014年からは保険収載された腹腔鏡下仙骨膣固定術 (laparoscopic sacrocolpopexy : LSC) へ移行し, 再度2020年4月からRASCをPOP治療の標準術式としている. 保険収載後の術式の変更点は, Extra armを患者右側に設置すること, 会陰操作にオクトパスを使用すること, RASCチームを結成し意識の統一と手順書を作成し腔内操作を統一化したことが挙げられる. 本稿では我々が用いた手術機材, 具体的な手術手技, 手術成績を含め詳細に示した. RASCは手術時間の延長やコスト面での問題が挙げられるが, ロボット手術の利点を最大限に活用することができる術式の1つであり, 今後広く普及していくことが期待される.

特集4:これから始めるロボット支援下腎盂形成術
  • 岩村 正嗣, 安井 孝周
    2021 年 34 巻 2 号 p. 237
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     腎盂尿管移行部閉塞 (UPJO) の外科治療としては, 開腹手術による腎盂形成術が標準術式として広く普及している. しかし腰部斜切開によるアプローチは, 腰筋群の切開を必要とする成人例においては侵襲性が高く, より低侵襲な治療法の開発が望まれてきた. 1993年にSchuesslerら1)により報告された腹腔鏡下腎盂形成術は, 従来の開腹手術と同様のコンセプトに基づき同様の手技が実施できることから, 内視鏡手術の低侵襲性と開腹手術の高い治療効果を併せ持つ術式として期待され, 本邦においても1998年頃より臨床応用が開始され, 2004年には保険収載されるに至った. しかし, 腹腔鏡下腎盂形成術では腹腔鏡手技の中でも難度が高いとされる質の高い体腔内縫合技術が必要となることから, 本邦での実施施設は一部のhigh volume centerのみに限定され, 当初期待されたほど普及してこなかったという現状がある.

     2002年, ロボット支援腎盂形成術がGettmanら2)により報告され, 明瞭な三次元拡大視野の下で多自由度鉗子を用いて実施する手術が体腔内縫合の難度を劇的に低減することが示された. さらに2020年の診療報酬改定で本術式が保険収載されたことにより, ロボット支援腎盂形成術は手術支援ロボットを保有する施設を中心に, 熟練者の手術ではなく, むしろエントリーレベルの手術として急速に普及することが予想される.

     腎盂形成術の目的は, 水腎症に伴う諸症状の改善と腎機能の保持にあるが, 無症状で経過しつつ腎機能が持続的に低下していく症例も少なからず存在する. また, 腎盂のコンプライアンスが低下した症例では, 手術により腎盂内圧が低下して症状は改善しても水腎症のグレードやレノグラムの閉塞パターンが偽陽性となることもあり, 適応の選択や術後評価に苦慮する症例も稀ではない.

     本特集では, ロボット支援手術がスタンダードとなるであろう将来を見据え, 開腹から腹腔鏡手術, そしてロボット支援手術への一連の流れにおいて豊富なご経験を持たれる先生方に執筆をお願いし, ロボット支援腎盂形成術の術式だけでなく, 術式を問わず普遍であるべき手術適応や術後評価について改めて解説していただいた.

     本特集が, ロボット支援手術の保険収載を機に腎盂形成術を開始される多くの若手の先生方にとって有益なものとなれば幸甚である.

  • 内藤 泰行, 安食 淳, 浮村 理
    2021 年 34 巻 2 号 p. 238-242
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     腎盂尿管移行部通過障害に対するロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術の手術適応と画像診断について概説する.

     まず, 腎盂形成術の手術適応は, 感染や痛みそして結石形成などの症状のあるもの, 無症候性では, 高度の腎盂拡張があり, 進行性の患側腎機能障害が認められるものや, 既に分腎機能低下があり拡張が長期にわたり継続するものと考えられる. さらに, このロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術の手術適応については, 日本小児泌尿器科学会の小児先天性水腎症診療手引き2016によれば, 体重10 Kg以上が推奨されるとなっているが, まずは成人症例に取り組んだうえで経験をつんで徐々に適応年齢や下げていくことが肝要と考える.

     腎盂尿管移行部通過障害に重要な画像診断には, 超音波検査, 造影CT, MRI, 逆行性腎盂造影 (RP), そして利尿レノグラムがある. 特に成人症例では, 腫瘍性病変や結石などの鑑別診断に有用であるとともに, レノグラムは治療方針を決定するための重要な検査である. さらに, RPは病態の診断のみならず, 形成手術における重要でかつ多くの情報を得ることのできる検査である.

  • 小林 泰之, 岩田 健宏, 西村 慎吾, 枝村 康平, 和田 耕一郎, 荒木 元朗, 渡辺 豊彦, 那須 保友
    2021 年 34 巻 2 号 p. 243-245
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     ロボット支援腎盂形成術 (Robot-assisted Pyeloplasty以下 : RAPP) は2002年にGettmanらが報告して以来, 海外を中心に広く行われている. 本邦においては, 2021年4月に保険適用され, 今後急速に症例数が増加することが予想されている. RAPPの成否を左右するポイントは, ①狭窄部の確実な切除, ②余剰腎盂の切離のデザイン, そして③適切な腎盂尿管吻合の3点である. 腎盂形成術は, 術後に機能が回復, 維持されて初めて成功と言える. この発表が, 安全で確実なRAPPの普及に役立てば幸いである.

  • 水野 健太郎, 西尾 英紀, 林 祐太郎, 黒川 覚史, 中根 明宏, 丸山 哲史, 戸澤 啓一, 安井 孝周
    2021 年 34 巻 2 号 p. 246-251
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     私たちは2012年12月から医師主導の臨床研究としてロボット腎盂形成術に取り組んでおり, 小児症例に対して良好な治療成績を報告してきた. 腎盂形成術は, 文字通り「形成手術」であり, 治療のゴールは, 分腎機能の維持・自覚症状の改善・通過障害の改善といった“trifecta”を達成することにある. そのためには, (1) 形成による腎盂尿管の立体的な構造を把握すること, (2) 交差血管など周囲と尿路との位置関係を正確に認識すること, (3) 体腔内でwater-tight, tension-freeな縫合操作を適切に行うこと, が重要であり, 複数の術式に対応できる必要がある.

     小児は成人と比べ, 体表面積が小さく, 腹壁が薄く弾力性が高い. そのためトロカー間の距離を狭くせざるを得ず, 術中のアーム干渉を回避するため配置にも工夫が必要となる. また体腔内スペースが小さいため, 安全にロボット手術を行う上で不用意なアーム操作を避けることも重要である. 術中の体位固定には緩衝材を多用し, アームと患児との干渉を未然に防ぐ必要がある. 現時点で私たちは経腹的アプローチで行っているが, 腹腔内脂肪の少ない小児では経腸間膜アプローチによって腎盂尿管移行部へ容易に到達することができる. 一次治療としてロボット腎盂形成術はすでに高い成功率が報告されているが, 近年, 初期治療がうまくいかなかった症例に対する二次治療としてロボット手術の有用性が報告されている. ロボット腎盂形成術のtrifectaを達成するには, 小児例におけるテクニカルポイントを把握し, 治療の成否に影響する要因を一つずつ確実にクリアしていく必要がある.

  • 西 盛宏, 山崎 雄一郎, 石井 大輔, 岩村 正嗣
    2021 年 34 巻 2 号 p. 252-255
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     開腹腎盂形成術に代わる低侵襲代替療法として1991年にSheslarらによって報告された腹腔鏡下腎盂形成術は開腹手術に比べ術後疼痛の軽減, それに伴う入院期間の短縮, さらには優れた整容性が得られる一方で体腔内縫合結紮の難易度の高さ, それによる長い学習曲線などの問題点が指摘されている. 2002年これらの欠点を補うべくロボット支援下腎盂形成術がGettmanらによって始めて報告された. 本邦においても2020年4月より保険適応となり, 今後多くの施設での施行が予想される.

     腹腔鏡下手術と同様にカメラで術野を確認しながら左右鉗子で手術操作を行うが, 3次元視野下での手振れ防止, モーションスケールを有する鉗子を用いた正確な手術操作はロボット支援下手術でなければ達成できないものである.

     術後評価方法は腹腔鏡下腎盂形成術と全く同じである. 具体的には症状のある症例に対しては症状の改善・消失, その他症状の有無に関係なく腎形態の改善をエコー検査, 腎機能の維持・改善を核医学検査で行う. 手術成功の定義は様々だが, 短期の手術成功率は腹腔鏡下手術と同等であり, 術後入院期間や合併症発生率も腹腔鏡下手術同様低いと報告されている. また長期治療成績の報告は少ないが, 術後8年間での手術成功率が96.3%だったとする報告もあり, こちらも腹腔鏡下手術同様, 長期的にも有用な治療法と考えられる. 一方, 体格の小さな乳幼児に対するロボット支援下手術は体腔内・体腔外の作業空間が小さいことなどから手術件数はいまだ低い. 代表的な先天性疾患であることからも体格の小さな乳幼児への適応が現状の問題点であろう.

尿路結石
  • 飯田 孝太, 岡島 英二郎, 清水 卓斗, 伊丹 祥隆, 平尾 周也, 藤本 健, 仲川 嘉紀, 田中 宣道, 藤本 清秀
    2021 年 34 巻 2 号 p. 256-260
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】奈良医大関連施設における10 mm以上の腎結石に対するRIRS (Retrograde intrarenal surgery), PNL (Percutaneous nephrolithotripsy) の治療選択と治療成績の評価.

    【対象と方法】2014年1月から2018年12月の間に10 mm以上の腎結石に対してRIRSまたはPNLが施行された128例を対象とし, 初期治療がRIRSとPNLの2群に分け, 患者背景, 手術成績を比較し, 残石や術後合併症の予測因子について検討した.

    【結果】PNLはRIRSに比べ若年, 結石体積が大きい症例で有意に選択され, 術後Hb低下率が高く, 術後発熱が多かった. 初回治療後の残石の予測因子はRIRSで結石長径20 mm以上, PNLでは認めなかった. PNLの術後発熱の予測因子は結石部位 (腎盂になし) であった.

    【結論】結石長径20 mm以上, 腎盂内結石の症例では初期治療でPNLが積極的に勧められる.

  • 辻本 裕一, 石井 信, 堀部 祐輝, 辻村 剛, 中田 渡, 任 幹夫, 辻畑 正雄
    2021 年 34 巻 2 号 p. 261-267
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】尿管結石に対する最大CT値の意義の検討. 【対象と方法】2012年-2019年の192例. Stone free (SF) は4 mm以下と定義. 【結果】年齢は19-88歳 (男性123例, 女性69例). 合併症は25例, 追加治療は16例に行われた. 最終的に154例 (80.2%) でSFとなった. 残石の有無で比較すると, 多変量解析では最大径 (中央値 13.0 vs 9.0) が大きく, CT値 (平均 1,259 vs 912) が高い結石で有意 (p<0.001) に残石となりやすかった. 最大割面の最大CT値は一定だが, 一定ではない平均値との比較でも結果に有意差を認めなかった. 【考察・結論】大きく, CT値が高い尿管結石には更なるTULの工夫が必要であり, CT値は最大値で代用できる可能性が示唆された.

  • 佐々木 克己, 井上 翔太, 松尾 聡子, 佐野 雄芳, 谷本 竜太, 藤田 治, 山野井 友昭, 児島 宏典
    2021 年 34 巻 2 号 p. 268-273
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     上部尿路結石による閉塞性腎盂腎炎に対して尿路ドレナージを含む治療後に施行された経尿道的尿路結石砕石術 (TUL) 68症例の検討を後向きに行った. 術前の尿培養ではE. coliが最も多く検出され, 周術期抗菌剤投与日数中央値は3日であった. 65例でstone freeが得られ, 周術期合併症を6例に認めたが全例で保存的に改善した. ADL重度障害例では, ESBL産生菌検出率が高い傾向で, 入院日数, TUL施行から退院までの日数, 周術期抗菌剤投与日数, 合併症率が有意に長期間かつ高率であった. 閉塞性腎盂腎炎を生じた上部尿路結石症例では, 感染コントロール後に尿培養結果に沿った周術期抗菌剤投与を行うことで安全にTULを行うことが可能ではあるが, ADL障害例は薬剤耐性菌保菌率が高く, 周術期に注意が必要と考えられた.

腹腔鏡手術 (副腎・上部尿路)
  • 関口 善吉, 佐々木 秀郎, 薄場 渉, 蜂須賀 智, 相田 紘一朗, 早川 望, 中澤 龍斗, 菊地 栄次
    2021 年 34 巻 2 号 p. 274-279
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     腎細胞癌に対する根治的手術様式であるミニマム創鏡視補 助下根治的腎摘除術 : minimum incision endoscopic radical nephrectomy (MIERN) とlaparo-endoscopic single-site plus one radical nephrectomy (LESS+1RN) の周術期成績を比較検討した. 2008年11月から2019年11月までに行われた根治的腎摘除術 (LESS+1RN : 46例 vs MIERN : 48例) を対象とし, 後方視的に解析を行った. 手術時間は251.6±56.5 vs 221.8±55.7分とLESS+1RN群で有意に長く (p=0.01), 出血量は75.3±241.7 vs 377.7±473.4 mLとLESS+1RN群で有意に少なかった (p=0.0003). 創長は5.2±1.0 vs 6.9±1.7 cmでありLESS+1RN群で有意に短かった (p<0.0001). LESS+1RN群で開腹手術への移行は2例あり, MIERN群で2例が創の延長を要した. LESS+1RNは手術時間が長いが, 出血量は少なく創長は有意に短縮した. 当院で導入したLESS+1RNは, 摘出臓器の近くに創をおき, 操作ポートを1つ加える事で, 特殊な器具や複雑な手技を用いることなく手術が遂行できる手術様式であり, LESS surgeryを安全に導入可能な低侵襲治療であると考えられた.

  • 白石 晃司, 磯山 直仁, 矢野 誠司, 松山 豪泰
    2021 年 34 巻 2 号 p. 280-286
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】10 cm以上の副腎腫瘍に対する鏡視下手術について最適な術式について検討する.

    【症例】1) 56歳, 男性, 褐色細胞腫 (右, 10 cm), 後腹膜鏡, 2) 63歳, 男性, 骨髄脂肪腫 (右, 10 cm), 3), 68歳, 男性, hematoma (左, 18 cm), 後腹膜鏡, 傍腹直筋切開ハンドアシスト併用, 4) 51歳, 男性, 褐色細胞腫 (左, 17 cm) 後腹膜鏡, 腰部斜切開併用. 褐色細胞腫については再発は認めていない.

    【考察】後腹膜アプローチによる早期流入動脈の遮断は腫瘍のshrinkageや出血量の減少を認めたが, 開腹移行した際に出血量が増加したケースもあり, アプローチ法や開腹のタイミングについては更なる検討が必要である.

ロボット手術
  • 植村 俊彦, 石橋 武大, 裵 祥存, 白川 昇英, 宋本 尚俊, 篠原 正尚, 小林 将行, 小丸 淳, 深沢 賢
    2021 年 34 巻 2 号 p. 287-294
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 : 後腹膜アプローチによるロボット支援前立腺全摘術 (RARP) の臨床的転帰を後方視的に検討した.

    対象と方法 : 2015年7月から2019年3月までにRARPを後腹膜アプローチで施行した前立腺癌患者127例 (RP群) と, 2011年9月から2019年3月までに経腹膜アプローチで施行した1,156例 (TP群) を対象とし, 周術期成績, 腫瘍学的転帰および尿禁制率を検討した.

    結果 : TP群に対してRP群では, 有意にコンソール時間中央値が短く (167分 vs 172分, p=0.015), 出血量中央値が多かった (150 mL vs 50 mL, p<0.0001). RP群とTP群それぞれの切除断端陽性率は22.8%と22.9%, 術後3年RFSは83.1%と82.2%, 術後3年の尿禁制率は90%と92%であり, 両群間で有意差を認めなかった.

    結論 : 後腹膜アプローチを用いたRARPは安全かつ有効に行われ, 中期的には制癌性, 尿禁制に関しては経腹膜アプローチと同等であった.

  • 山本 顕生, 北風 宏明, 惣田 哲次, 本郷 祥子, 吉岡 厳, 奥見 雅由, 髙田 晋吾
    2021 年 34 巻 2 号 p. 295-299
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】限局性前立腺癌患者に対する, 後腹膜アプローチによるロボット支援体腔鏡下前立腺全摘除術 (eRALP) が腹腔アプローチによるロボット支援体腔鏡下前立腺全摘除術 (RALP) と比較して安全かつ有効に施行できているかを検討する.

    【対象と方法】2013年11月から2020年5月までの期間に当科で経験したeRALPの12例とRALPの394例を対象とし, 手術成績を後方視的に検討した.

    【結果】eRALP群ではポート造設時間が有意に長かったが, コンソール時間, 手術時間は有意差を認めなかった. 出血量, 術翌日のCPK値はeRALP群で有意に高値であったが, 輸血を要した症例はいずれの群でも認めなかった. 合併症率に有意差を認めず, 尿道カテーテル留置期間や入院期間, 術後再発率, 術後パッドフリー率も有意差を認めなかった.

    【結論】eRALPはRALPと比較して安全かつ有効に施行できていた.

  • 山崎 将頌, 槙山 和秀, 川畑 遼, 長坂 拓学, 鈴木 敦人, 仁禮 卓磨, 青盛 恒太, 蓼沼 知之, 伊藤 悠亮, 村岡 研太郎, ...
    2021 年 34 巻 2 号 p. 300-306
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     【目的】当院でロボット支援腎部分切除術 (RAPN) を施行したcT1a症例とcT1b症例の手術成績を比較検討した. 【対象と方法】2016年3月から2019年6月までに当院でRAPN施行した210例 (T1a : 177例, T1b : 33例) を対象として後方視的に検討した. 【結果】両群間で年齢, 性別, 患側, BMI, 術前eGFRに有意差はみられなかったが, cT1b群でRENAL nephrometry scoreは有意に高かった. cT1b群で手術時間, 気腹時間, コンソール時間, 阻血時間は有意に長く, 出血量もcT1b群の方が有意に多かった. 両群間で輸血施行数, 合併症発生率, 切除断端陽性率に有意差はみられなかった. また, 両群間で術前後での腎機能変化率に有意差はみられなかった. 【結語】当院でのcT1b腎腫瘍に対するRAPNはcT1aに比べ手術時間, 阻血時間, 出血量が増えるが, 合併症, 切除断端, 術後腎機能は同等で, 安全に施行可能であった.

  • 引田 克弥, 森實 修一, 本田 正史, 武中 篤
    2021 年 34 巻 2 号 p. 307-312
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】

     Advanced Reconstruction of Vesicourethral Supportがロボット支援前立腺全摘除術後早期尿禁制に与える影響を検討した.

    【対象・方法】

     神経非温存ロボット支援前立腺全摘除術を施行した患者のうち, Advanced Reconstruction of Vesicourethral Support施行群 (A群) と, 非施行群 (B群) における術前, 術中, 術後所見, 尿禁制を比較した.

    【結果】

     A群59例, B群46例, 両群間に有意差を認めたものは, 術後膀胱造影における後部尿道膀胱角 (中央値131度 vs 138度, P=0.041) であった. 多変量解析において, 抜去翌日の尿失禁量が150 mL以下となる独立した因子は, 年齢 (68歳未満, P=0.014, Odds Ratio 3.1), Advanced Reconstruction of Vesicourethral Supportの施行 (P=0.024, Odds Ratio 2.9) であった.

    【結論】

     Advanced Reconstruction of Vesicourethral Supportは, 術後早期の尿禁制に影響を与える可能性がある.

  • 本郷 祥子, 近藤 楓基, 山本 顕生, 北風 宏明, 惣田 哲次, 吉岡 厳, 奥見 雅由, 花井 禎, 塚原 稚香子, 高田 晋吾
    2021 年 34 巻 2 号 p. 313-317
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】

     我々の施設で47例のロボット支援腹腔鏡下仙骨膣固定術 (RASC) を施行した. 導入初期の術者間の検討を行ったので報告する.

    【対象/方法】

     術者は婦人科医Aと泌尿器科医Bで, 腹腔鏡下仙骨腟固定術 (LSC) の術者経験を各々44例, 13例有していた. 対象は年齢55-80歳のPOP-Q (Pelvic Organ Prolapse-Quantitation) stage Ⅱ以上のシングルメッシュ法による手術行った患者43例 (術者A : 31例 B : 12例).

     方法は手術時間を手術操作ごとにパート分けし, 術者間で検討した.

    【結果】

     両群で背景に有意差はない. 術者間における手術時間に統計学的有意差はなかった.

    【考察】

     LSCの経験数よりもロボット手術への習熟度が手術時間の短縮へ寄与すると考えられる.

  • 齋藤 満, 成田 伸太郎, 沼倉 一幸, 嘉島 相輝, 山本 竜平, 小泉 淳, 奈良 健平, 羽渕 友則
    2021 年 34 巻 2 号 p. 318-322
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     今回我々はロボット支援腹腔鏡下腎尿管全摘除術 (RNU) の初期経験を得た.

     対象は2019年7月から2020年7月にda Vinci Si (4例) またはXi (2例) サージカルシステムでRNUを受けた6症例. 全例男性で患側は左4例, 右2例, cT3の3例を含む4例で術前化学療法を施行した. 完全側臥位, 軽度ジャックナイフ体位, 6または7ポート, 経腹膜アプローチで手術を施行した. 術中, 体位変換やペイシェントカートの移動は行わなかった.

     手術時間の中央値は308分, 推定出血量の中央値は63 mLで輸血や開腹手術移行は無かった. pT3の左尿管癌症例1例で摘出標本断端が陽性であった. 周術期合併症はClavien-dindo分類でGrade Ⅱの乳糜腹水, 下痢を1例ずつ認めた.

     RNUは手術手技の標準化とより多くの症例を対象とした長期追跡調査が必要であるが, UTUC症例に対する新たな治療選択肢となり得る.

  • 森 亘平, 西 盛宏, 平野 修平, 北島 和樹, 池田 勝臣, 石井 大輔, 岩村 正嗣
    2021 年 34 巻 2 号 p. 323-327
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】

     当科において施行されたロボット支援腎盂形成術 (Robot-Assisted Pyeloplasty : RAPP) の初期成績をまとめ, 旧来の腹腔鏡下腎盂形成術 (Laparoscopic Pyeloplasty : LPP) との比較検討を行ったので報告する.

    【対象・方法】

     当科で施行したRAPP 30例とLPP 50例について, 患者背景, 手術内容, 術後経過に関して比較検討した. 手術は全例, 経腹膜到達法によるAnderson-Hynes法にて施行した.

    【結果】

     RAPPは6名, LPPは2名の術者が執刀した. 手術時間, 気腹時間, 吻合時間, 出血量は170分/181分 (p=0.33), 140分/151分 (p=0.29), 41分/54分 (p<0.01), 13 mL/5 mL (p<0.01) であった. 全例術後に改善を認めた.

    【結論】

     RAPPはLPPと比較し手術時間, 在院日数, 成功率ともに同等で遜色ない.

  • 福田 翔平, 松岡 陽, 齋藤 一隆, 藤井 靖久
    2021 年 34 巻 2 号 p. 328-334
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    【緒言】当院では限局性前立腺癌に対し小線源療法による前立腺部分治療を行っている. 部分治療後の局所再発2例に救済ロボット支援前立腺全摘除 (sRARP) を施行した.

    【方法・結果】症例1は59歳. 中間リスク前立腺癌の診断で両葉腹側への部分治療を施行. 治療4年6カ月後, 局所再発ありsRARPを施行. 尖部周囲に癒着あるも非治療域である前立腺背側の癒着はなかった. 症例2は67歳. 中間リスク前立腺癌の診断で右葉への部分治療を施行. 治療3年10カ月後, 局所再発ありsRARPを施行. 右側方・右背側に癒着あるも非治療域である左側方の癒着はなかった. いずれの症例も周術期合併症を認めず, 術後生化学的再発なく経過, 社会的尿禁制を得ている.

    【結論】小線源部分治療後局所再発へのsRARPは治療選択肢の一つとなりうる.

  • Takeshi Kashima, Makoto Ohori, Yuri Yamaguchi, Naoto Tokuyaka, Kazuyos ...
    2021 年 34 巻 2 号 p. 335-341
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    OBJECTIVE : To develop a preoperative nomogram to predict the non-biochemical recurrence (non-BCR) after robot-assisted radical prostatectomy (RARP).

    METHODS : A thousand patients who underwent robot-assisted radical prostatectomy at the Tokyo Medical University were studied. Based on Cox hazard regression analysis, a nomogram was developed to predict non-biochemical recurrence at 1, 3, and 5 years after robot-assisted radical prostatectomy. For external validation, the parameters of 200 patients who underwent robot-assisted radical prostatectomy at the Shin-Yurigaoka General Hospital were used to calibrate the actual and predicted values using our nomogram.

    RESULTS : A hundred and sixty-eight patients had biochemical recurrence during the follow-up period (mean, 44.4 months). Analysis showed that age, PSA, biopsy primary and secondary Gleason pattern, clinical T stage, and the percentage of positive biopsy cores were significant predictors of biochemical recurrence.

    CONCLUSION: The nomogram was validated with internal and external calibration to provide an accurate prediction of non-biochemical recurrence. It may help both patients and clinicians to determine the most appropriate initial treatment for clinically localized prostate cancer.

  • 錦見 俊徳, 山田 浩史, 石田 亮, 水野 秀紀, 山内 裕士, 大橋 朋悦
    2021 年 34 巻 2 号 p. 342-349
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】当院のロボット支援下腎部分切除術 (RAPN) 初期101例について検討する.

    【対象と方法】平均年齢 : 61.1歳. 男性72例/女性29例, 患側 : 右53例/左48例, 腫瘍サイズ中央値 : 2.4 cm, 臨床病期はcT1a : 91例, cT1b : 10例, 平均RENALスコア : 6.3点. 術者は5名, 第2-5術者の手術には第1術者がプロクターとして全例関与した.

    【結果】手術時間 (中央値) : 249分, コンソール時間 (中央値) : 183分, 温阻血時間WIT (中央値) : 19分, 出血量 (中央値) : 50 mL. 周術期合併症は術後出血6例, 尿瘻1例, ガス塞栓1例. 切除断端はすべて陰性. Trifecta達成は全体で82.2%, 第1術者と第2-5術者ではそれぞれ90.9%, 71.7%であった.

    【結論】Trifecta達成は全体で82.2%と諸家の報告と遜色ないが, 第1術者と第2-5術者ではTrifecta達成に差があり, 今後の課題がみられた.

前立腺肥大症
  • 宍戸 俊英, 石田 卓也, 橋本 剛, 佐竹 直哉, 並木 一典, 相澤 卓, 林 建二郎, 大野 芳正
    2021 年 34 巻 2 号 p. 350-355
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     holmium laser enucleation of the prostate (HoLEP) およびモーセレーションの安全かつ有効な灌流方法を検討するために, 国内で使用されている3社のHoLEP用内視鏡の灌流量をルアロックコック使用の有無も含め測定した. また, 3社のイリゲーションチューブの流量も比較した. HoLEPの設定では各社とも500 mL/分以上の流量があり, また, ルアロックコックを用いても流量の低下はほとんどなかった. モーセレーション時に1ルートで腎盂鏡のイリゲーションポートから灌流を行うと外筒側に比べ流入量が少なかった. イリゲーションチューブは内径が大きいもの, 2連結よりも4連結で流量が多かった. HoLEPおよびモーセレーションを行う際は内視鏡の接続ルートの違いによる流量の差を考慮し, ルアロックコックを用いた効率の良い灌流方法を選択することが重要であると考えられた.

  • 佐々木 賢一, 木村 将貴, 萩原 奏, 金子 智之, 高橋 さゆり, 山田 幸央, 中川 徹
    2021 年 34 巻 2 号 p. 356-361
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

     デュタステリドが光選択的前立腺レーザー蒸散術の周術期成績や術後経過に及ぼす影響を検討した. 当院で前立腺肥大症に対して光選択的前立腺レーザー蒸散術を施行した症例のうち, 術前にデュタステリドとα1遮断薬を併用内服していた23例と, α1遮断薬単独内服の31例, 計54例を対象として後方視的に比較した. 全症例の年齢は72歳・前立腺体積は58.5 mL (中央値). 手術時間, レーザー出力量・照射時間, 蒸散させた前立腺単位体積当たりのレーザー量・時間 (蒸散効率), 術前後のヘモグロビン変化において両群間に有意な差は認めなかった. 両群ともIPSSや最大尿流率, 残尿量は術後1カ月より改善し, 術後1年経過後も改善が維持されていた. デュタステリド術前内服は光選択的前立腺レーザー蒸散術の周術期, 術後成績で不利益になる影響は認めず, 排尿状態の改善が得られた.

  • 野村 博之, 山口 秋人, 内藤 誠二, 横溝 晃
    2021 年 34 巻 2 号 p. 362-366
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】接触式レーザー前立腺蒸散術の有効性と安全性に関して検討した. 【対象と方法】2019年6月から2020年8月までに前立腺肥大症に対して接触式レーザー前立腺蒸散術を施行した46例を対象とした. 治療に伴うIPSS, QOLスコア, 最大尿流量, 残尿量の改善を前向きに検討した. 【結果】平均年齢70.3±6.4歳, 平均前立腺体積90.5±32.7 mL, 平均手術時間102.5±21.4分, 平均レーザー照射量466.4±110.6 kJであった. 一過性尿閉を2例で認めたが重篤な合併症はなかった. IPSS, QOLスコア, 最大尿流量, 残尿量のすべての主要評価項目において術後早期から排尿状態の改善が確認され術後6カ月でも良好な治療成績が維持できており, 治験と同等以上の良好な治療成績であった. 【結論】短期成績ではあるが, 接触式レーザー前立腺蒸散術は良好な治療効果と高い安全性を示し, 前立腺肥大症に対する高い有用性が示唆された.

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