抄録
上部尿路癌の外科的治療の標準術式は腎尿管全摘除術+膀胱部分切除術であるが,所属リンパ節郭清の治療的意義,腫瘍部位別の郭清範囲に関しては,コンセンサスが得られていない.文献レビューの結果,腹腔鏡下腎尿管全摘除術においても,所属リンパ節郭清に関して言及した報告は限られていた.腫瘍部位別の郭清範囲に関しては,腎盂癌,上部尿管癌については腎門部と,右側は傍大静脈リンパ節,左側は傍大動脈リンパ節を郭清範囲とし,下部尿管癌では骨盤内リンパ節を郭清範囲とする報告が多かった.また大動静脈間リンパ節の郭清に関しては術者の判断で施行を決定する報告が多かった.郭清リンパ節個数は平均値もしくは中央値で6-14個であった.近年は,欧米からロボット支援腎尿管全摘除術の報告が散見され,郭清リンパ節個数は平均もしくは中央値4-21個で,ロボット支援腎尿管全摘除術でより多くのリンパ節を郭清できたとする報告もあった.また米国の非軍事病院,非連邦病院のデータベースを用いた研究では,ロボット支援腎尿管全摘除術でリンパ節郭清の施行頻度が高い[開放腎尿管全摘除術:15%(1697/11695),腹腔鏡下腎尿管全摘除術:10%(252/2638),ロボット支援腎尿管全摘除術:27%(611/2286)]とする観察結果も報告されていた.腹腔鏡下のリンパ節郭 清は,一定の技術を有する内視鏡外科医であれば安全に施行可能であり,腹腔鏡下手術という理由のみで安易にスキップすることは慎むべきであると考えている.術前病期診断の精度を高めることで,郭清範囲の縮小や郭清が不要な症例の見極めが次の課題であると考えている.