Japanese Journal of Endourology
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特集3:女性泌尿器領域の手術の現状と展望
膀胱膣瘻および腹圧性尿失禁手術に対する手術
嘉村 康邦
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2018 年 31 巻 1 号 p. 71-77

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抄録

 尿失禁をきたす二大疾患である膀胱膣瘻 (VVF) と, 腹圧性尿失禁 (SUI) の手術療法について解説した.

 膀胱膣瘻閉鎖術 (vesico-vaginal fistula closure, VVFC) は大きく開腹と経膣の2つのアプローチがある. 一般に婦人科手術後に生じたVVFは膀胱三角部付近にあることが多く, 瘢痕も含めた瘻孔部分が尿管口から離れていれば, 多くの場合経膣手術が可能である. 経膣手術は, 経腹と比べ明らかに侵襲は小さく術後の回復も早いためできるだけ選択したい術式である. 本稿では開腹手術については割愛し, 経膣膀胱膣瘻閉鎖術の実際について詳述した. 先進国におけるVVFはその件数は極めて少なく, 一般泌尿器科医が閉鎖手術に習熟するのは難しい. 将来的には地域ごとに指定の施設に患者を集約化し, 熟達した術者が手術するシステム構築が望ましいのではないかと考えられる.

 腹圧性尿失禁に対する手術療法としては, tension-free vaginal tape (TVT) や transobturator tape (TOT) などの中部尿道スリング手術が標準術式とされ, 女性下部尿路症状ガイドラインでも, TVT, TOTは推奨グレードAの術式である. これらの手術成功のこつとして, メッシュテープを挿入する中部尿道の“ベッド”作成のポイントと, ニードルの穿刺の工夫について述べた. 米国ではFDAによる経膣メッシュ手術に対するPublic Health Notificationの影響で, 十分なEBMを有し確立された術式である中部尿道スリング手術まで忌避する患者が出現している. 本邦ではこのようなことがないよう, 患者啓発が必要であろう.

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© 2018 日本泌尿器内視鏡学会
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