日本臨床救急医学会雑誌
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臨床経験
自殺企図前後の精神医学的診断の課題
山本 俊郎藤村 奈緒藤田 誠―郎
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2008 年 11 巻 6 号 p. 467-470

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抄録

当センターで2005年,2006年に治療した自殺未遂症例130症例(男性22例,女性108例)の自殺企図前後の精神医学的診断を比較して,精神科治療の現状を推察した。企図前の診断は通院中の前医の診断を,企図後は当院精神科医の診断とし,ICD-10を用いて表記した。治療歴のない28例を除いた102例の前医診断では,F2,F3,F4の診断が83例(81.3%)を占め, とくにF3が46例(45.1%)と多かつたが,F6は10例(9.8%)と少なかった。当院において併診のなかった30例を除いた100例の精神科医の診断では,F2,F3,F4は56例(%)とその割合は低下し,F6が22例(%)と高率であった。当院の精神科医の診断をもとにして前医の診断をみると,F2,F3では前医/精神科医は12/14(85.7%),17/20(85.0%)と一致したが,F4,F5,F6では6/12(46.2%),2/9(22.2%),7/21(33.3%) と一致率は低かった。一方,前医の診断をもとにして精神科医の診断をみると,F2,F6では精神科医/前医は12/16(75.0%),7/9(77.8%)と一致したが,F3は17/38(44.7%)と一致率は低かった。前医の診断には比較的新しい診断の人格障害F6は少なく,うつ病と診断されたなかに人格障害がかなり含まれていると思われた。診断が高率に異なったことより,前医への照会を励行し情報を交換することで精神状態を再評価していただき,退院後の再企図防止を図る必要があると思われた。

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© 2008 日本臨床救急医学会
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