日本臨床救急医学会雑誌
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原著
  • 一ノ瀬 佳彦, 中尾 彰太, 松岡 哲也
    原稿種別: 原著
    2025 年28 巻6 号 p. 851-858
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    目的:院外心停止に対するバッグバルブマスク(BVM)換気中における呼気終末二酸化炭素(EtCO2)値が自己心拍再開(ROSC)の予測に対し有用性があるかを明らかにすること。方法:大阪府岸和田市内で発生した院外心停止患者を対象に,BVM換気中のEtCO2値がROSCの予測因子となるか,また,EtCO2を含めた予測モデルと含めない予測モデルの受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)の比較,尤度比検定とcalibration plotの視覚的評価を行い,予測モデルへのEtCO2の付加価値があるかを検討した。結果:ロジスティック回帰分析の結果,EtCO2値はROSCに関連していた(OR 1.55;95%CI:1.05-2.28;p=0.0276)。2つのモデルのAUCに差はなかった(OR 0.75;95%CI:0.69-0.81 vs OR 0.77;95%CI:0.71-0.83:p=0.0955)が,尤度比検定の結果,EtCO2値を含めた予測モデルのほうが有意に安定し(p=0.02),calibration plotも視覚的に安定していた。結語:BVM換気中のEtCO2は,ROSCを予測する因子であり,EtCO2の追加により臨床判断の安定性が高まる可能性が示された。

  • 菅沼 和樹, 白戸 康介, 宮内 直人, 杉本 龍, 西山 千尋, 森下 美緒, 能重 久太郎, 千村 純, 松本 菜月, 吉池 昭一
    原稿種別: 原著
    2025 年28 巻6 号 p. 859-862
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    目的:低体温を呈する患者の中に敗血症が存在することは知られているが,実際にどのくらい存在するのかはよくわかっていない。そこで,寒冷地に位置する当院における実態を調査することとした。方法:2020年4月~2023年3月の3年間に当院へ救急搬送された時点で体温が35℃以下であった患者を対象として,血液培養の陽性率などを後方視的に検討した。結果:対象となった121例のうち100例が血液培養を採取されていた。血液培養陽性であったのは24例であり,真の陽性と判断されたのは16例(16%)であった。結論:寒冷環境下で倒れていた状態で発見されて救急搬送されてくる患者は外気温による偶発性低体温症と短絡的に考えがちであるが,低体温を呈する患者の中に敗血症が少なからず存在しているため,救急外来での初期対応の時点では敗血症の可能性を常に念頭に置いて診療にあたるべきである。

調査・報告
  • 長岡 敏信, 飴山 晶, 田邉 晴山, 福島 英賢, 真弓 俊彦, 伊藤 重彦
    原稿種別: 調査・報告
    2025 年28 巻6 号 p. 863-870
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    下関市では高齢化の進行に伴い,高齢者の救急搬送人員が増加傾向にあり,その対策は喫緊の課題となっている。そこで本研究では,一定数の救急搬送が行われている市内の高齢者福祉施設を対象に,advance care planning(ACP),do not attempt resuscitation(DNAR),看取りへの取り組みとCOVID-19流行期における対応についてアンケート調査を実施した。市内195施設に対して48施設(回答率24.6%)から回答を得た。アンケート結果から,施設において看取りおよびACPに関する取り組みが一定程度確認された一方で,看取り体制やDNAR対応,入所者・家族との対話に対する多様な実態が浮き彫りとなり,制度的・実務的な課題が依然として存在することが明らかとなった。今後,制度整備とともに,現場に即した継続的支援とACPの社会的認知の促進が求められる。

  • 岩下 具美, 島田 遼太郎, 川﨑 亮, 勝山 貴仁, 山﨑 健, 柳沢 圭, 森 幸太郎, 三山 浩
    原稿種別: 調査・報告
    2025 年28 巻6 号 p. 871-876
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    目的:救急救命士(救命士)が院外心肺停止傷病者(CPA)に静脈路確保を実施(IV)する時期を意識調査(Q)し,早期IV・薬剤投与を困難とする状況を分析し救急隊の現場活動の標準化につなげる。方法:地域MC協議会に参加する3消防本部222名の救命士を対象に「Q1 目撃のあるCPAへの薬剤投与はどこで行うべきか?」「Q2 傷病者接触場所(現場)でIV時に支障となる因子は何か?」「Q3 現場で仰臥位の成人男性にIVする際,活動スペースはどの程度必要か?」を調査した。Q結果を開示しCPAのIV場所の推移を調査した。結果:回答率は56.8%であった。「Q1:現場77.0%,救急車内で現発前21.2%,現発後0.8%」「Q2:活動スペース29.6%,照明や清潔16.7%,プライバシー14.8%」「Q3:A 救急車に搭載している担架と同等の広さ6.3%,B 担架を短辺方向に2列並べた広さ66.7%,C Bよりも長辺方向に20cm長い広さ24.3%」であった。現場IV率はQ前30.6%,Q後50.2%で,IV率の低い消防本部ほどQ後の増加が大きかった。結語:目撃のあるCPAに救命士の約8割が現場で薬剤投与を想定し,担架が横2列並ぶ広さが必要であった。Qとその結果の開示は現場IV率を増加させた。

  • 立石 裕樹, 宮田 祐一, 齋藤 靖弘, 坂口 結斗, 藤戸 靖久, 紺野 樹理, 長谷川 翔, 大島 良康, 矢野 洋平, 渡邊 裕之
    2025 年28 巻6 号 p. 877-884
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    目的:救急外来における薬剤師の常駐勤務は進んでいないため,その推進に必要な情報を得るためにアンケート調査を実施した。方法:徳洲会グループ13施設の救急救命士に無記名アンケートを実施し,薬剤師に期待する勤務体制,医薬品関連業務,現状業務に対する満足度を調査した。結果:有効回答は114件(91.9%)であった。期待する勤務体制は常駐勤務(66.7%),医薬品関連業務は「救急搬入患者の常用薬の把握および医師への情報提供」(57.9%)がもっとも多かった。ロジスティック回帰分析により薬剤師の専従勤務および専任勤務が満足度に影響する有意な因子と抽出された。結論:多くの救急救命士が薬剤師の常駐勤務に期待しており,専従勤務および専任勤務が満足度向上に関連する可能性が示唆された。

  • ―可視化によって見えた効果と課題―
    乙宗 佳奈子, 佐々木 和浩, 吉川 圭, 白井 邦博, 黒田 泰弘
    原稿種別: 調査・報告
    2025 年28 巻6 号 p. 885-893
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    香川県では速やかな事後検証,作業効率の軽減,評価基準の統一と問題点の可視化を目指し,2019年4月,事後検証のオンライン化を行った。検証対象症例を見直し,統一した評価基準としてA~Dの4段階評価を導入,各症例について問題点を消防側(Fコード),医療機関側(Hコード),県やMC(Mコード),社会福祉・施設(Sコード),と表記するシステムを採用した。各消防でまず一次検証を行い,その後オンラインで検証医による二次検証を実施,必要な症例は現地とオンラインのハイブリッドで開催される事後検証会議で検討する。本システム導入により,香川県の病院前救急医療体制の問題点が明らかとなった。明らかになった問題点に対し,新たな施策やプロトコル導入が検討され,オンライン事後検証システムの運用課題も判明した。今後も事後検証オンライン化システムのブラッシュアップを行い,効果的なPDSAサイクルで現場活動の質を高める努力が必要である。

症例・事例報告
  • 後藤 法広, 一山 紗彩, 岩原 素子, 中川 丞子, 外間 亮, 高江洲 怜, 新里 盛朗, 富山 修志, 土屋 洋之, 星野 耕大
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年28 巻6 号 p. 894-897
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    緩和的抜管は,終末期患者において苦痛緩和を目的として人工呼吸器を離脱する医療行為である。本邦における緩和的抜管の報告は少なく,体外式膜型人工肺(ECMO)管理下での実施例は見当たらない。本症例は62歳男性,ANCA関連血管炎による呼吸不全と腎不全に対し,VV ECMOおよび持続的血液濾過透析(CHDF)を施行したが,治療に対する反応はみられず,終末期と結論づけた。家族はECMOやCHDFの中止を望まなかったが,苦痛緩和を希望したため,ECMO管理下で緩和的抜管を実施した。抜管後もECMOは問題なく稼働して呼吸状態に変化はなく,苦痛軽減と家族の満足度向上が得られた。ECMO管理下での緩和的抜管は呼吸状態の急激な変化を生じにくく,医療従事者や家族への心理的負担が少ない終末期ケアの選択肢となり得る。

  • 新垣 かおる, 澁澤 安友未, 小林 有彩, 渡辺 あずさ, 椎貝 真成, 新井 晶子, 阿竹 茂
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年28 巻6 号 p. 898-901
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    食餌あるいはこれに密接な関係を有する異物によって,まれに腸管腔の閉塞をきたすことが報告されており,食餌性腸閉塞と呼ばれている。また,Meckel憩室はほとんどが無症候性で,癒着や索状物を伴わずに通過障害をきたすものはまれである。今回,癒着や索状物を伴わないMeckel憩室が原因となった,キクラゲによる食餌性腸閉塞を経験したため報告する。症例は32歳男性,腹痛精査の造影CTで,小腸が大量の内容物により著しく拡張し閉塞していたため,緊急手術を施行した。拡張した小腸はMeckel憩室を伴っており,大量のキクラゲが充満し完全に閉塞していた。血流障害および癒着や索状物はなかった。Meckel憩室を伴う食餌性腸閉塞と診断し,憩室を含む小腸部分切除術を行った。術後経過は良好であった。Meckel憩室は癒着や索状物がなくとも食餌性腸閉塞の原因となり得る。食餌性腸閉塞がMeckel憩室を伴う場合は,血流障害の有無にかかわらず,憩室切除術を念頭に置いた治療を行う必要があるため,腸閉塞に遭遇したときは鑑別診断の一つにあげて診断と治療を進めることが望ましい。

  • 牛島 宏貴, 小網 博之, 三橋 泰仁, 妻鳥 敬一郎, 阪本 雄一郎
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年28 巻6 号 p. 902-906
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    目的:鈍的頭部外傷により両側重度難聴をきたし,迅速な専門医介入と多職種連携により聴力改善が得られたまれな症例を報告する。症例:72歳,男性。約2mの脚立から転落し頭部を打撲。受傷直後より両側難聴を自覚した。経過:初期CTで右側頭骨横骨折,急性硬膜下血腫等を認めた。第8病日の純音聴力検査で両側重度感音難聴と診断。高次医療機関での精査にて,CTで右半規管断裂を確認したが左側頭骨骨折は不明瞭であった。受傷6カ月後の頭部MRI造影後FLAIR像で両側内耳道末端等に増強効果を認め,両側側頭骨骨折による内耳性難聴と診断した。補聴器の効果は限定的であったため,受傷7カ月後に左人工内耳植込術を施行した。結果:手術および術後の聴覚リハビリテーションにより,機能的聴力回復を得ることができた。結語:鈍的頭部外傷による両側重度難聴に対し,プレホスピタルから専門医療機関に至る迅速かつ一貫した医療連携と,人工内耳植込術の早期導入が,患者のQOL向上につながる機能的聴力回復を実現するうえできわめて重要であることが示唆された。

  • 武田 多一, 園部 藍子, 樋口 遥水
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年28 巻6 号 p. 907-910
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    二クロム酸カリウム中毒で救命された1例を報告する。症例は50歳代の男性。二クロム酸カリウム20gを秤量し内服して自殺を企図し,直後から悪心嘔吐を繰り返していた。内服から約12時間後に当院へ救急車で搬入されたときには意識清明でバイタルサインは安定していた。胃洗浄で赤橙色の胃内容を確認し活性炭と浸透圧性下剤を経管投与した。血液透析を3日間にわたって3回施行し,重金属解毒剤ジメルカプロール,アスコルビン酸,輸液を静脈内投与した。入院経過中に肝障害,腎障害,消化管運動障害,誤嚥性肺炎をみたが保存的に改善し,入院17日目に退院して自宅近くの内科と精神科に紹介となった。二クロム酸カリウムは工業や研究で用いられる強力な酸化剤で,経口摂取すると消化管障害や多臓器不全をきたし死に至ることもある危険な物質である。本症例では致死量を超える量を嚥下していたが,直後の嘔吐や病院での集中治療により多臓器不全増悪や死亡を回避できたと考えられた。クロム酸中毒の事例は多くないので,後学に資するものとして症例報告とした。

  • 菅井 一真, 大村 和也, 田中 達也, 篠﨑 浩司
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年28 巻6 号 p. 911-915
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    脳動脈瘤によるクモ膜下出血に合併する脳血管攣縮は,生命予後に大きく影響する病態であり,その予防が重要である。2022年より臨床導入されている選択的エンドセリンA(ETA)受容体拮抗薬クラゾセンタンは,脳血管攣縮の高い予防効果が期待されている一方,体液貯留などの浮腫性合併症が臨床上の課題となっている。本稿では,クラゾセンタン投与中の70歳代女性が抜管直後より喉頭浮腫を発症し,急速な気道狭窄により緊急再挿管を要した症例を提示する。クラゾセンタンの薬理作用に基づいたETB受容体作用の相対的増強や,クモ膜下出血後の全身性炎症,高齢者特有の血管脆弱性が重なり,喉頭浮腫が急速に進展したと考えられた。本症例は,クラゾセンタン投与中の患者における上気道浮腫のリスクに対する新たな警鐘であり,今後の薬剤管理戦略に重要な示唆を与えるものである。

編集後記
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