2012 年 15 巻 1 号 p. 32-35
症例は24歳女性。うつ病にて近医で通院加療中であった。自殺目的に灯油を頭からかぶり,頭部,顔面から下肢にかけてⅢ度40%,Ⅱ度30%および気道熱傷を受傷し当院搬送となった。ICUでの全身管理にて徐々に状態改善し,一般病棟での管理となっていたが,低栄養状態,中心静脈栄養の使用など易感染状態が遷延した。入院第117病日,第6回目の皮膚移植手術後に,敗血症性ショックを呈しICU再入室となった。セフォゾプラン(CZOP),テイコプラニン(TEIC),フルコナゾール(FLCZ)にて加療開始するも,治療に反応不良であった。ICU入室3日目に,血液培養にてカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が同定され,直近の抗真菌薬使用歴も考慮しアゾール耐性カンジダ菌血症を疑い,抗真菌薬をミカファンギン(MCFG)に変更し,治療に反応した。受傷後第341病日に自宅退院とした。本症例は,初期の抗真菌薬が起因菌をカバーできていなかったものの,適切な全身管理で全身状態を保ち,過去の抗菌薬の使用状況から耐性菌を認知することで救命することができた。真菌の薬剤感受性検査は必ずしも行われるものではないが,必要に応じて検査の追加,治療の変更が必要となることがある。