2015 年 18 巻 6 号 p. 761-766
70代男性。一過性意識障害を主訴に来院した。意識は改善していたが,腹部膨隆,緊満を認めた。腹痛は訴えず,腹膜刺激症状は認めなかった。CT検査にて全結腸の拡張,直腸,S状結腸の便塊貯留,腹水を認めた。著明なアシドーシスを呈していたため,腸管壊死を疑い緊急手術を行った。S状結腸を切開し糞便を吸引し減圧,下行結腸に黒色変化を認めたため左半結腸を切除,断端を人工肛門とした。術後口側断端が壊死したが内視鏡にて残存腸管に壊死所見は認めず,経過観察とした。糞便による閉塞性大腸炎では,腹部所見が乏しい場合でも,救命のためには減圧,壊死腸管切除目的に早急な手術が必要なこともあり,壊死範囲の伸展,新規出現を念頭においた治療を要す。